2017年6月19日月曜日

キャプ翼fanfic続きです

前回分の更新は、副長官室に保存できたのですが、別ページにあれこれ細かい修正をしたりして、いよいよ、今回の続きを投稿しよう!と思ったら、またもや

サーバーエラー

とのメッセージが…。

ですので、今回も、こちらに一旦投稿ということにさせていただきます。

またまた中途半端な更新となってしまいましたが、とりあえず。

前回までのお話は、C翼を知っていますか でどうぞ。

※21:25現在、この続きも無事「副長官室」に保存できました。

・・・・・


旦那は離婚の危機を回避できるのか:日向小次郎さん目線




ホテルの廊下を反町と並んで歩いてくる若島津を目にして、俺は我知らず、ほっと息をついた。

だがあいつは、俺の姿を目にとめて、その歩調を緩めた。

なんだ?

何とは指摘できないが、これまで感じたことのない小さな違和感に、俺はわずかに眉をひそめた。

反町が小走りに近寄ってきて、いつものごとく姦しく声をあげながらカードキーをドアのスロットに刺した。

反町の頭越しに見える若島津が、やっと手の届く距離に近づいた。
だがそこで、あいつはふいっと俺から目をそらした。

気づいた時には、俺はあいつの胸倉をつかんで壁に叩きつけていた。



****



若島津とともに部屋に入った俺は、手前の綺麗に整えられたままのベッドに、どさっと腰を下ろした。

若島津のベッドだ。
昨夜帰ってこなかった、あいつの。

俺は片手で前髪を掻き上げ、軽く笑い声を立てた。

まだドアの近くで、逡巡していた若島津が、俺に不思議そうな視線を投げる。

「反町のやつ、見たか?俺を思いっきり睨み付けていきやがった」

若島津がふっと息を吐いた。

「あんたが急に俺の胸倉掴んだりするからでしょ」

「あいつは、何があったってお前の味方だからな。まあ、昔っからそうだ。昨日の昼からずっと、奴にこっぴどく説教されっぱなしだったんだぜ。
お前があんな風に飛び出していって、帰ってこないのは、全面的に俺が悪いってな。
お前が帰ってきたら、お前を問い詰めたりなんかしないで、とにかくひたすら謝れってよ」

柄にもなく、そうベラベラと口走りながら、ふと俺の言葉の途中で若島津が身体を固くしたのを見て取って、俺は、ベッドの隣をバシッと叩いた。

「ここへ座れ」

若島津が覚悟を決めたように、歩いてきた。
コートを脱ぎ、軽くたたんで近くの椅子にかけ、俺の隣に座る。

あいつがいつになく俺との間に少し空けた距離に気づいて、俺は、改めてあいつの姿を見直した。
わずかに俯きがちに目を伏せ、コートを脱いでシャツ一枚になった若島津は、なんとなく小さく見える。
色白の頬からは少し血の気が失せて、長く濃いまつ毛に覆われた黒い目が、いつもより大きく強調されているようだ。
ふっくらとしたピンク色の下唇を持て余したかのように、軽く噛みしめている。

長年見慣れているはずの若島津の姿が、まるで初めて目にするような、別人のように見えるのは、どういうことなんだ?

疲れているらしいことはわかる。

昨夜はあまり寝ていなそうだ。

だがそれが、それこそ尻のホクロの一つまで知り尽くしているあいつを、まるで見知らぬ存在にするなんてことはあり得ないよな?

額に落ちかかった髪を長い指で漉き上げ、伏せていた瞳をあげて、俺の言葉を待つように、微かに首をかしげて俺を見つめ返す若島津。
潤んだ黒い瞳が微かに警戒を滲ませているように見えるのは、俺が殴るとでも思ってるってことか?

俺のどんな言葉を待ってるんだ。

俺が、どんなことを言うと思ってる?

記憶にある限り、若島津が朝帰りをしたのは、初めてで。
若島津が今俺に見せている、こんな表情を俺は知らない。

俺は手を伸ばし、あいつがわずかに身を竦ませるのを無視して、あいつの身体を引き寄せ、抱きしめた。

あいつは一度身体を固くした後、俺の首筋に顔をうずめ、くったりと力を抜いて俺の身体にもたれ掛かってきた。

俺は、若島津の背中を二、三度強く擦り、大きく息をついた。

この体温、手のひらに伝わるしなやかな筋肉の弾力、石鹸の香りの下に潜む、甘く温かい、紛れもないこいつの匂い。

この腕の中にいるのは、確かに俺の若島津だ。

さらに力の抜けた若島津を抱え上げるようにして、俺はベッドに倒れこんだ。

「疲れた。…眠い…」

若島津が俺の胸元で、そう小さく呟く。

「そうか、少し寝ろ」

俺は若島津を抱きしめたまま、サラサラした髪に鼻先をうずめて言った。

「日向さん、大好き…」

突然耳に入ってきたそんな言葉に、思わず笑みを浮かべた時、若島津がさらに言葉を続けた。

「でももうこれで終わり。あんたを解放します」

ほとんど眠気に引き込まれつつ、そうかすれ声で言った若島津は、そのまますうっと眠りに落ちた。

反射的に頭を起こして若島津の顔を覗き込んだ俺は、あいつの目じりを伝う涙を眉を顰めつつ指先でぬぐい、さらにきつくあいつを抱きしめて、目を閉じた。

俺も昨夜はほとんど寝ていない。ややこしい話は、ひと眠りしてからだ。


・・・・


むむむむむ。

どうも奥さん、離婚の意思、固いみたいよ。

どうするの?日向さん。

またまた誰か編へ続く



2017年6月5日月曜日

キャプ翼fanfic: 暫定保存

某副長官室に保存していた『キャプ翼』のやおい小説があるのですが…。

大変奇特なお方より、つい最近、ぜひ続きを読みたい!なんていうありがたいお言葉を頂きまして、勢いで、ちょびっとだけ、続きを書いてみたものの、

本編を保存している、副長官室にUPしようとしたところ、

サーバーエラー、という謎のメッセージで、更新を受け付けてもらえなかったので、

とりあえず、暫定で、こちらの部屋に保存することとしました。


では、以下、えっ?今?キャプ翼????の続きです。


*****

パパっ、ママをいじめたら許さない!:反町目線


注:もともと熊好きの私としては、若かりし頃にも、興味の対象といえば、柔道や相撲…といった方面でして…、正直、サッカーに興味を持ったことはなく、ワールドカップなどに備えて、全日本の選手たちがどんな練習や合宿をやっているのか、まったく知りません。
パリのカフェで、若島津の行動を反町達が観察して、勝手に好き勝手な実況をつけたら面白かろう、というだけの観点で、遠~い昔のうろ覚えなFanfic設定を引っ張り出して書き始めた、このシリーズなので、実際のサッカー選手たちが行う合宿の事実や現実と大きくかけ離れているのはもちろん、キャプ翼の(私が全く読んだことのない)大人編の設定(登場人物たちの体格等も含め…)とも全く乖離しているであろう点に、あらかじめお詫びしておきます。あしからず。
『こんなのありえない!!!』って、い、石を投げないでくださいね…。


以下、『妻の朝帰り』の続きです。


*****


一緒にエレベーターに乗り込んだ若島津の顔を、俺は無遠慮に観察した。

なんだ?

気だるげな、いや物憂げ、かな?ある意味、儚げとも言える、こんな表情は見たことがない。

さっき、並んでロビーへと入ってきた、背の高い二人の姿がふとフラッシュバックされた。

まだ学生気分の抜けない(実際、学生もまだ沢山いる)俺たちの集団とは何の関わりもない、大人のカップルにしか見えなかった。

それが、若島津と若林の二人だと気づいて、なぜだか心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。

あの二人の距離感。

若島津の頬にくっつきそうに頭を屈めて、何かを話しかけた若林から、少し俯きがちながらも、身を反らせたり、身体を離すことなく、ごく自然に、大きな体に寄り添うように立ったまま、言葉を返していた若島津。

身内だと認めた存在以外、ちょっとやそっとじゃ、他人に心を開くことがない、ある意味、鉄壁の人見知りともいえる若島津が?

しかも相手は、小学校以来の最強最大のライバル若林だぞ?

まさか、まさかだよな?

まさか、と呟きつつ、自分が何を想像しているのかもはっきりしない。

想像が頭の中で具体的に画を結ぼうとするのを頭のどこかが拒否してる。

気づいた時には、俺は走り出して、若島津の首にしがみついていた。

ただ若島津を若林という大きな存在から引き離したかった。

*****

エレベーターを降りて、若島津と並んで歩きだした途端、まさに俺たちの部屋のドアに寄りかかって腕を組んでいる、日向さんが目に入った。

並んで歩いていた若島津のスピードがガクンと落ちたのに気付きつつも、俺は足を速めて、日向さんに近寄った。

「さ、早く荷物持って、ロビーに集合しないと、合宿所行きのバスに置いていかれちゃいますよ。ほらっ、日向さん!ちょっとどいて!」

俺はことさら声を張り上げて、日向さんの体をわずかに押しのけ、カードキーをドアのスロットに差し込んだ。
その時、俺をドアに押し付けるようにして身を乗り出した日向さんが、近づいてきた若島津のシャツの襟首を掴み、ドアの脇の壁に、若島津の身体ごと、どんっと叩き付けた。

俺は驚愕して、目の前の鋼のような日向さんの腕に、反射的にしがみついた。

まさに走馬灯のように、あ、俺、絶対弾き飛ばされる…、もんどりうって転がった着地点で、俺は絶対にうまく受け身を取れない!と思った瞬間。

若島津の手が、日向さんの手首をつかんで、動きを封じた。

この夫婦、本気を出したら、絶対奥さんの方が強いんだった。

「反町、先にロビーに戻っててくれ」

若島津が真っ直ぐに日向さんを見つめたまま、そう言った。

その顔をじっと見上げて、声をなくしている俺に視線を向けて、若島津がもう一度言った。

「先にロビーに戻ってくれ。大丈夫だから」

若島津のシャツを掴む日向さんの手が少し緩んだ。

喉から飛び出しそうに暴れまくっている心臓のおかげで、少し耳鳴りがしている。

「反町」

俺は必死でしがみついていた日向さんの腕から、ゆっくり手を放した。

しゃくり上げるような息を一つついて、若島津に頷いてみせた。

若島津が俺の髪をくしゃっと撫でて、日向さんの身体の圧力で押し付けられていたドアの前から俺の身体を押しやった。

俺は、俺にちらっと視線を寄越した日向さんを睨み付けて、ゆっくりと歩き出した。

「反町、俺たち後から合宿所に直行するって伝えろ」

日向さんの低い声に、はっと振り返り、二人がドアの向こうに消えるのを目にして、ドアに飛びついて叩きつけたい気持ちを抑え、俺は丁度目の前でドアが開いたエレベーターに乗り込んだ。

あの二人、どうなるにしたって、二人で答えを出すしかないんだ。


*****


この後、離婚協議ですか?




多分、日向さん編に続く。

2012年3月19日月曜日

Randy Blue



ここしばらく生活がすっかり変わってしまった上、ついに新しいPCを購入したものの、なかなか細かい設定やデータをゆっくり新しいPCに移す時間がないなどの事情もあって、まったくと言っていいほど日記を書く時間がとれなくなってしまってはいるのですが、



可能な限りな範囲で、あいかわらず



海外ドラマは見ていますし、



Slashも読んでいます。



で、



少し前のことになりますが、



J2が、それぞれずっとTop(攻)として名を馳せてきたGay Porn Starで、このたび初めて、カメラの前で、リバーシブルという形で、それぞれ受の立場を経験することになる、



というSlashが投稿され、そのお話の冒頭に



This story was inspired by two NSFW - but sweet - videos:



ということで、二つの映像が貼り付けてあったのです。



そして、その作者さんがインスピレーションを受けたという映像の一つが、



超ナイスバディなイケメン男優さん揃いであることで有名らしい



『Randy Blue』 というゲイポルノサイトのとあるクリップのBehind the Scenes(撮影の裏側) 映像だったのですけれども、



こ、これが!



作者さんも上で言っているとおり、超NSFW(Not Safe For Work: 職場で開くのは危険です!の略ですね)な映像ではあるものの、とにかくもう超可愛くてっ!



私は、ここしばらく暇さえあれば見てしまうというくらい虜になってしまいました。



ということで、現在の私には、本当に、正直言って、日記を書く時間はないはずなんですが、どうしても我慢できないので、ちょこっとだけ、超久々に日記を開いてみることにしました。



↓ に、ひとまずその映像へのリンクへとつながる、Slashのリンクを貼り付けます。




このお話の頭に貼ってある



「the Randy Blue clip making the rounds in the fandom」



というのが、私がもう中毒のように、ここしばらくほぼ毎日繰り返しみているビデオクリップです。

(でも、絶対に職場では、そして、家族に「腐」な女子であることをカミングアウトしていない方は、周囲に人目のあるところでも開かないでください!ほのぼのと可愛いけど、大変刺激の強い映像です!)



この映像は、



ゲイポルノ界ではまだニューフェイスらしい、カナダ出身の若干19歳のJayden Tylerという、(身体は大変立派だけれども)可愛い男の子が、



先輩モデルのPaul Wagner というセクシーなんだけど、どこか朴訥な雰囲気もある逞しいTopに、初めてFuckされるというClip撮影の際の



Behind the scene です。



「I’ve directed quite a few scenes at Randy Blue

僕は、Randy Blueでかなりの数の映像の監督をしてきたが…



But I’ve never seen 2 models “fall” for eachother.

二人のモデルがお互いの虜になってしまうなんていう場面を目にしたことはなかった


Until now… 

これまでは… 」 



という文章がまず画面にあらわれ、キュートなJayden君が、ちょっとシャイな笑顔でカメラの前に登場します。





「ということで、君は、明日、Fuckされることになるんだね」



「僕はFuckされることになってる、うん。えーっと…、誰にFuckされるんだっけ」



「Paul Wagnerさ」



「Paul Wagnerだ」



「彼の映像を見たことがあるかい?」



「あるよ、彼は、本当にHotだよね」



翌日



「あー、くそっ、Paul Wagnerじゃないか」



「ああ、再び、な」



「再びだ。Randy Blueには、君は欠かせない存在だ。君は今日、新人のJayden Tylerと撮影することになってて、君がTopをやる。どんな感じだい?」



「ああ、いいね。彼はキュートだ」



「思いっきりやってやるかい?」



「ああ」



「容赦なく?」



「あー、いや、すごく優しくしてやるよ」



「なんだって、Paul!ったく、君はここで、情けなんかかけないっていうべきところだろ!(笑) そんなに優しくっちゃ駄目だ!

オーライ、じゃ、仕切り直しだ。君は、あの子に情け容赦なく、思いっきりやってやるかい?」



「ああ、あいつを泣かせてやるよ」



「よし、さあいこう」



なんていう、冒頭の二人のモデルへのちょっとしたインタビューシーンから始まる、この「Behind the scene」映像。



この後、特にJayden君が、完全にPaulの虜になってしまったっていう感じで、撮影とは関係ないところで、二人がずーーーーっと、いちゃいちゃしていた、という様子がカメラに収められています。



本当に、二人の仲良しな様子が微笑ましい限りではあるのですが、



これって、やらせじゃないの?(この映像も演技なんじゃないの?)



という疑惑が浮かんでしまうくらい、この二人、とにかくずっと、あきれるくらいべったりいちゃいちゃしているのです。



なんとかもう少し情報をつかみたい一心で、この二人の映像本編のPreview映像をRandy Blueのホームページに覗きに行ってみたところ、



なんと、この二人、本編(の、少なくともPreview)では、Behind the scene よりも全然演技が下手!

(そもそもPornのモデルさんたちに演技を求めるのが間違ってるんでしょうけどもね…)



ってことは…、あのBehind the sceneの超自然な仲良しぶりって…、


カメラに気づくたび照れたりするJaydenの様子とかって…、


あれって、素ってこと?



監督のコメントとしては:



Some performers stop and go their separate ways when the director says cut. But not Paul Wagner and Jayden Tyler. These two hot studs were getting it on before the scene started, during the breaks and even in the shower after the scene was long over. Is there a love connection? I’ll let you decide.



ってことで、そこに愛情があるのかについての判断は、あなたにお任せしますって、



画面を見つめる私たちに任されちゃったわけなんですけど。 


JaydenとPaul、この撮影をきっかけに、恋に落ちて、付き合うことになったりしてないかなー。


Randy Blueのホームページには、他にも別のモデルさんたちのBehind the scene映像がアップされていたりするのですけれども、

閲覧回数は、この「Jayden and Paul」の映像が、ダントツ群を抜いて、とびぬけた数字になっています。


今後、この二人を主人公にしたクリップが、シリーズで撮影されたりすることになったりするのかも
しれないですよねー。


そんなことになったら、ぜひとも、拝見したい!とは思うものの、


でも…、まだ、Gay Porn映像を購入する勇気は、ない、か、な…。



2011年11月8日火曜日

Full Houseって、韓流ドラマだったのね…







久々に、ツボにしっくりはまる、面白い長編Slashを読みました。





Title:『 The Only House on the Right 』


Pairing: Jared/Jensen

Rating: NC-17

Word Count: 51, 464語

Summary - When Jensen comes back from a vacation to find that his childhood home has been sold, he isn't counting on action hero/egotistical jerk Jared Padalecki to come swooping in to save the day. Soon he finds himself married to a celebrity and learns that love has a funny way of knocking on your front door.


Based on KBS' Full House.




フルハウスというドラマをもとにしているというので、私はてっきり、双子のオールセン姉妹が子役として出ていた、あのほのぼのファミリードラマだとばかり思っていたら、


KBSって、韓流ドラマなんですね!


なるほどー。恥ずかしながら、今、日記を書き始めつつ検索して、初めて知りました。


私の知っている『フルハウス』とは、ストーリーが似ても似つかないと思ったのは、全く違うドラマだったからなんですね。


Jensenが、生まれ育った大切な家を奪われてしまう過程の設定が、あまり極端というか、説明不足な感じで、そこだけが唯一消化不良ぎみだったのですが、(今まで一度もちゃんと見たことないんだけど…)韓流ドラマがもとになっていたのだとわかれば、なんか妙に納得です。


俺様なアクションスター(action hero/egotistical jerk)のJaredと、

ほそぼそと短編小説を発表したりしている、とても売れっ子とはいえない作家のJensen。


韓流ドラマの『フルハウス』をご覧になった方なら、たぶんストーリーの大筋は一緒なのだと思いますので、もう私のあらすじはつけないことにしてしまいますが、


Jared & Jensenのキャラクターが、とにかく好みで、ストーリーの流れも、もろ好み…。


特にJensenが、次々ととんでもなく不幸な状況に晒され続けるっていうのに、全然くじけないし、明るいし、でもどうしようもなく同情しちゃう感じに可愛いしで、

(でも、今になって考えると、これこそが、きっと韓流ドラマのヒロインの設定なんですよね!な、なんか、最後までどっぷりと感情移入して読み終えた自分を思うと…悔しくなってきた…)


それにしても、こんなラブストーリーをドラマとして見せられたら、イチコロで韓流ドラマファンになっちゃいますね…。


ああ、やっぱり私って、韓流世代なんだなー。


でもっ、まだっ、韓流には手を出さないつもりです。


ちなみに、このお話に興味を持たれたかた、PDFファイルをダウンロードして読んだほうが断然楽です。


私は通常、投稿されたLJでそのまま読んでいく派、なのですが、このお話は、チャプターごとに、すごく細かくページ分けされているので、次ページをクリックしつつ進んでいくのが、かなり面倒なのです。





2011年10月14日金曜日

Caught Running 第五章

大丈夫かな? 大丈夫かな? と、恐る恐る様子を見ながら投稿し続けてきた、私の一番のお気に入りの


Gay Romance 小説 Caught Running。





いい加減、たぶん、これが最後になってしまうかなーと思うのですが、第五章を投稿します。


(と、言いつつ…、主人公の二人、まーだラブシーンに突入してくれないので、本当はもうちょっとだけ…投稿したい)



私のつたない翻訳ではありましたが、Gay Romance 小説っていったいどういうものなの?と疑問をお持ちだった方々に、片鱗でもヒントになったのであれば、


そしてこのジャンルの小説に興味を持っていただけたのであれば、私としては、



『同志が増えた!!』



ということになりますので、何よりも嬉しいことです。




どうぞ、引き続き、息を潜めて、こっそり読んでいただければと思います。









『Caught Running』









第五章






三月二日、金曜日の夜。ということはつまり、地元チームのサポーターたちが大挙して押し寄せるということを意味する。ジェイクとしては、シーズン最初の試合はアウェイでの試合が望ましいのだが。大抵の場合、そのほうが、プレッシャーがいくらかでも軽減されるからだ。しかしそこには欠点もある。ホームグランドの強みを失うだとか、はるばるパウダースプリングスくんだりまで何時間もバスに乗っていかなければならないだとか。


マッカカーン・インディアンスは、パークビューが地元ではないのだが、まるでホームで試合をしているかのように戦っていた。ジェイクが想像するに、昨年パークビューを相手に屈辱的な敗北を喫したことで、尻に火がついたということなのだろうと思ったが、七回を迎えた時点で、インディアンスは四対三でリードしていた。空は暗くゴロゴロと鳴り始めており、ジェイクはベンチからそんな空を見ながら、この試合は最後まで継続可能だろうかと考えていた。


彼はユニフォームの文字の上を擦り、鼻に触れ、それから耳を引っ張った。思い切り振っていけ、のサインだ。選手はうなずき、バットをもう数回試し振りしてから、青いドーナツ型の錘を地面に落として、バッターボックスへと向かった。ジェイクはひまわりの種をいくつかぷっと吐き出すと、手を叩き、選手の名前が最後につく、特別意味もないような一連の言葉を声援として怒鳴った―野球言葉というやつで、ベンチにいる人間は皆、ははっきりと理解しているようだ。


ブランドンは三塁ベースの横に立っていた。ヒットや走者が沢山出て、彼にとっては神経をすり減らすような初試合となり、これまでずーっと死にそうにびびっていた。でもこれまでのところはなんとかうまくやれているらしい。とにかくジェイクからの怒鳴り声は飛んできていない。一塁ベースコーチとは違って。彼は選手を二塁に送りアウトにしてしまったため、こっぴどく噛み付かれていた。科学教師はベンチから飛ぶ声を聞き、少なくともそのうちのいくらかは言葉に意味があることを知って、彼の注意をバッターに向けた。


マウンドに上がった新しいピッチャーは、強い球を投げたが、ついに降り始めた雨の中、少しコントロールを乱していた。四球投げて、四番打者のカウントはスリーボール、ワンストライクとなっていた。ジェイクは彼に声をかけ、鼻を触ってから、耳を引っ張り、それから胸の文字を擦って、顎を触った。振るな、と選手にサインを出したのだ。


次の一球で、バッターはフォアボールで一塁へと歩いた。彼らの逆転への追撃が始まった。しかしそこで雨は本降りとなった。そして振り続けた。そしてさらに降り続く雨に審判は試合中止を宣言した。不運にも六回をまわっていたため、試合は成立したものと考慮され、パークビュー・パンサーズは、シーズン最初の試合で苦い敗北を喫することとなってしまった。


ブランドンは、雨の中、びしょ濡れになることを覚悟で大学生たちと一緒に用具を荷造りしていたが、それも重い荷物を抱えてバスへと走る子供たちに比べればましというものだった。全員が荷物をまとめ、その荷物をコンパートメントに積み込むと、バスに乗り込んだ。ブランドンは静かに話し込んでいるジェイクと一人の四年生を押しのけて進み、中ほどからやや後ろの自分の席を探した。彼はどさっと座ったものの、ビシャという感触に少し身をすくめた。自分へのメモ: 天気予報が雨じゃなくてもタオルと着替えを荷物に入れること。


短い話し合いの後、ジェイクは生徒を席につかせ、運転席に滑り込んだ。全員が揃ってバスに乗っていることを確認すると、ジェイクはドアを閉め、体をぶるっと振って水を盛大に振り飛ばして、バスをスタートさせた。負けたことについては、彼は子供たちに何も言わなかった。彼らは、再び戻ってくることを知っていて、そしてその時には絶対いい試合をすることを知っているのだ。言うべきことはそれだけだった、本当に。三十分後、ジェイクは扱いにくいバスをウェンディーズの駐車場へと乗り入れ、立ち上がって後ろを向くと、疲れて濡れた子供たちをじっと見た。「四年が先だ」彼が大声で言ったのはそれだけで、その後ブランドンに向かい、立ち上がってこっちへ来いとうなずいて見せた。


ブランドンはバックパックを取り上げると、ヘッドコーチに続いてバスを降り、二人一緒にレストランへと入って静かに注文し、部屋の奥の方のテーブルについた。二人はレストランにどんどん入ってくる子供たちから目を離さずにいて、子供たちの最後には二人の大学生アシスタントたちがついていた。


ジェイクは自分のファストフードのトレイにかがみ込み、物悲しそうな顔でポテトフライでケチャップの溜まりを突いた。「お前、よくやったよ」ようやく口を開いた彼はブランドンに向かってそう呟いた。「緊張したか?」


サラダのトッピングのアーモンドのパックを破って開けながら、ブランドンはつぶやいた、「緊張したか、と彼は聞く。ああ。死ぬほどびびってた」と、彼は自分の食事から視線すら上げずに小声でささやいた。


ジェイクは微笑んで自分の食事を見下ろし、初日の練習以来ずっと募り続ける温かさと親しみの感情に抵抗した。「俺もそうさ」彼は簡単に認めた。


ブランドンは驚きを込めて視線を上げたが、その驚きは自分の気持ちを楽にしてくれたジェイクに対する感謝へと変わった。彼は自分のサラダに注意を戻し、ドレッシングを半分かけて、全部を混ぜ始めつつ、この一ヶ月ほど、ほぼ毎日顔を合わせ続けた後で、彼ら二人がどれほど距離を縮めたかに思いをはせていた。ジェイクには、いまだにしょっちゅう足元をすくわれっぱなしではあるけれども。「皆、頑張ったよね?」と、彼は食べながら言った。


「やつら、本当によくやったよ」ジェイクは子供たちを見やりながら同意した。生徒たちはまだほとんどがユニフォームのままで、まだ濡れていて、汚れていて、疲れた様子だったが、一列に繋げたテーブルの周りに固まって、大きな一塊の集団となって座り、おしゃべりし、冗談を言って、笑っていた。ジェイクは愛情のこもった笑顔で子供たちを見て、自分の食事に戻った。


サラダを前にして椅子に深く座り、ブランドンはチームのメンバーを興味深く見守っていた。彼らがいいプレイのことを語り、逃したチャンスについて声高に不平をぶちまけて、仲良くやりとりしているようすを見つめた。彼は、湿っているどころではない濡れに身震いし、ほとんど空になったサラダボウルを下ろした。自分のバックパックを見下ろし、ふとあることを思い出した。「すぐに戻るから」彼はそう小声で言って、バッグを持ってトイレに向かった。


ジェイクは一瞬手放しの切望を込めて歩いていく男を見やった後、再び頭を下げて、ポテトを突いた。彼の心に募った、このちょっとしたのぼせをなんとかしなければならない。街へと出かけて、ガス抜きでもするか。


一つだけのトイレに入ると、ブランドンはバッグを落とし、ジャージと濡れて気持ち悪いアンダーアーマーを脱いだ。彼は手を乾かす温風乾燥機の風を強くして、しばらく壁に寄りかかったまま、うめき声を上げつつその前に立っていた。風が止まると、彼はバックパックの中を探り、あの『男女混合裸レスリング』Tシャツを引っ張り出した。彼はTシャツを再びまじまじと見て鼻を鳴らして笑った。ジェイクがいなかったら、彼がこんなものを着ることは絶対になかっただろう。彼はTシャツを頭からかぶり、乾いた感触を嬉しく思った。濡れたジャージをもう一度羽織ったものの、ボタンは開けたままにして、テーブルへと戻った。


ジェイクは戻ってきたブランドンを見上げたが、自分の貸したTシャツを目にして、思わず二度見した。確かにとりあえず乾いてはいるよな。「あー、お前ずるいやつだな」ジェイクは小さく微笑みつつ文句を言った。「とにかく、ガキどもにはお前が濡れてないってことを知られるなよ、永遠にここから出られなくなるから」


ブランドンは笑顔になった。「なんで僕がまたジャージを着てきたと思ってるんだい?」彼はそう尋ね、再び席に座って、食べている生徒たちを見やった。「後どのくらいかかると思う?」


「なに言ってんだ」ジェイクは静かに笑った。「やつらは食ってるんじゃない、吸い込んでるんだ。五分だな」と、彼は請け負った。「ああっと、フロスティシェイクを飲むから十分か」


ブランドンは、採点はパスすることにした。今の時点でこんなに疲れ切ってしまうなんて信じられなかった。バスで少し仮眠をとることにしよう。そうすれば、家まで運転して帰れるようになるだろうし、その後二時間くらいは仕事ができるだろう。「うーん。フロスティシェイクか」彼はちょっとその考えに惹かれて呟いた。


「もし飲むなら今すぐ決めろよ」ジェイクはそう警告して自分のゴミを集めて立ち上がった。「長い列に二回並ぶ時間はないからな!」


ため息をつき、ブランドンはシェイクをあきらめた。今晩は走れないだろうし、なのに無駄なカロリーを摂取することはない。彼は自分のゴミを片付け、ジェイクからそれほど遅れずに、バスへと向かった。


ヘッドコーチは運転席へと滑り込み、ここへ座ってチームがよろよろと戻ってくるのを待っていれば、少なくとも忙しそうには見えるだろう、と自分に言い聞かせた。ブランドンが近くにいるといつだって、手持ち無沙汰でいることを後ろめたく感じてしまう自分に気づいていた。これは彼にとって間違いなく新しい感情だった。彼はブランドンがバスのステップを上ってくるのを視界の片隅で見つめ、大きなバックミラーでそれとなくブランドンの動向を追いかけた。


目を擦りながらブランドンは腰を下ろし、隣の席にバックパックをどさっと置いた。彼は、ジェイクがバスを道路に出すまでなんとか目を開いていたものの、比較的静かな周囲の状況と、規則的な振動に、冷んやりした窓に頭をつけて、すぐにうとうとし始めた。ジェイクは、この暗さと雨の中、必要以上にバックミラーをちらちら見ている自分に気づき、ついに強制的にブランドンから視線を引き剥がして、正面へと固定させた。三十分後、彼は動きの悪いバスを学校の駐車場へと乗り入れ、そこで待っていた親たちのグループに向けてクラクションを鳴らした。


ジェイクは脇に立ち、彼に別れの挨拶を言いながらバスをぞろぞろと降りていく少年たちの頭を一人ひとりポンっと叩いてやった。明日、つまり土曜の午後には、また試合があり、彼は、子供たちは皆、それに対する準備が出来ていることを知っていた。自分の意思で土曜日をあきらめるティーンエイジャーはそう多くない。本気で打ち込んでいるものだけだ。生徒たちが移動しはじめると、ブランドンは体を起こして、ぼんやりと何度も瞬きしながら、自分が今どこにいるのかを把握しようとした。子供たちが全員バスから降りると、彼は立ち上がり、数歩歩いてから、振り返って自分のバッグを掴んだ。彼は目を擦りながら、バスの前の方へと歩いた。「用具は?」彼は静かに尋ねた。


「俺が片付ける」ジェイクは頭を振って答えた。「やつらは皆疲れ切ってるから、家に帰らせてやらないとな」彼は、子供たちがそれぞれの迎えの車へと散っていくのを見守りながら、そう断言した。彼はブランドンを振り返り、眉をひそめた。「お前、ボロボロだな」彼は目の前の男ににべもなく言った。「お前それで、家まで運転して帰れるのか?」


「うん」ブランドンは自動的にそう答えたが、ステップの一番下で立ち止まった。まだかなりぼうっとしていて、ちゃんと立っていられないくらいだった。「駄目かも」と、彼は訂正した。


ジェイクは少し笑顔を見せ、それから自分が何をしようとしているのかを自覚して、さっと冷や水を浴びた気分になった。そんなことをすべきでないことはわかっていたが、それは三百ポンドの男が自分に突進してくるのを目にして、もしボールを捨てれば、そいつが自分にぶつかってこないと分かっている時と同じようなものだった。ジェイクはそんな時、ボールを手放せたためしがなかった。どれだけ痛い目をみることになるとわかりきっていても。「車の鍵を貸せ。お前は俺の家に泊まればいい」コーチは、断固としてそう命令し、鍵を求めて指を動かした。


ブランドンは疲れきった目をジェイクに向け、半分でも本気の反論をつむぎ出すことができなかった時、自分がどうにもならない状態にあることを知った。鍵を探す代わりに、彼はただバックパックを差し出した。ジェイクはバッグを受け取り、小さなポケットをいくつか慎重にさらって、鍵を見つけた。彼はリモコンを使ってブランドンの車のロックを開けたが、車は割合に近くに停まっていた。彼はブランドンを車の方へと向かわせた。「中で楽にしてろ、俺もすぐに行く」彼はコーチの声でそう命令し、ブランドンの肩を少し押しやった。


科学教師は反論しようとすら思いつかなかった。自分がどうなってしまったのかもわからない。ただあのままバスで眠っていたかった。彼は車の助手席へと倒れこみ、ドアを閉めた途端、そのドアに寄りかかった。まるで彼の体が金曜の晩であることを知っていて、彼の意向を無視して勝手に機能を停止させてしまったかのようだった。


ジェイクはブランドンが車に乗り込むのを見守ってから、子供たちがバスの横に残した用具の山を振り返った。彼は、家に帰りついた時に襲ってくるであろう様々なうずきや痛みを刺激したくなかったため、ゆっくりと全てをダグアウトへと運んだ。全てを運び終えるとドアに鍵をかけ、バスを駐車スペースへと動かし、ゆっくりとブランドンの車に向かって歩いていった。胃袋がそわそわとヒクついたが、落ち着け、と自分に言い聞かせた。これでは全くガキな上にマヌケだとしか言いようがなく、こんなことはすぐに止めなければならない。こんな風に、ブランドンに対する熱を抱え続けていたら、いずれ何かを犠牲にすることになるだろう。おそらくは彼の正気を。


彼は静かに車に乗り込んだ。ブランドンは既に眠り込んでいるらしく、静かに息をしていたが、薄暗い灯りの下でその顔は落ちくぼんでいるようで、目の下のくまは余計に誇張されているように見えた。車のドアを閉めても彼は動かなかった。ジェイクは座ったまましばらく彼を見つめ、彼の顔に見入った。なんとかこの男と親しくなる方法はないものかと思ったが、彼にばつの悪い思いをさせるようなことくらいしか思いつかない。静かにため息を一つつき、ジェイクは車のエンジンをかけ、駐車場から走り出て、自分のトラックは置き去りにして自分の家へと向かった。


車が停まり、エンジンが切られると、それまでの心地よい振動が突然消えたことで、ブランドンは目を覚まし、無理やり目を開いて雨に濡れた窓の外を見やった。「な?」彼はぶつぶつ言いつつ、座りなおそうとした。


「家に着いたぞ」ジェイクは彼にそう告げて、車から降りると、後部座席からブランドンのバッグを取った。「この中のもの何か必要か?」


ブランドンは小雨の中に降り立ち、ジェイクの家を見上げ、今更ながら、これっていい考えだったのだろうかと自問した。「ううん」と彼は答えてドアを閉め、そのまま車にもたれかかりたいと思った。


「だったら中に入れ」ジェイクは車の後ろを回ってきながらそう命令し、優しくブランドンの肘をとった。「シャワー、乾いた服、そしてベッドだ」彼は小さく微笑んで、そう言い聞かせた。


そのまま動きたくないと思いつつ、ブランドンは一瞬時が止まったような瞬間を目にした。消え入りそうな月明かりの中、ジェイクが彼の隣に立ち、雨が二人を包むように降っていて、ジェイクは優しい表情を浮かべ、彼の目にそれ以上に優しい感情が溢れている。その後、その瞬間は破られて、時間は再び動き始め、ブランドンはジェイクに導かれて家へと入った。


「階段を上がって、廊下をまっすぐ進んで、突き当たりのドア、それが俺の部屋だ。そこのシャワーを使っていい、シャンプーもタオルもある」ジェイクはそう指示して、バッグをドアのところに置いた。彼自身のためにも、別のバスルームを来客用に準備しておけばよかったと思いながら。「それから、あー、お前が入っている間に、何か着るものを用意しておく」


ブランドンは動き出してから、一言もしゃべってなかったことに気づいた。何かを言おうと振り返った時、ジェイクが彼のすぐ後ろいて驚いた。ジェイクは彼に突っ込み、彼の両腕を掴んでなんとかバランスを保った。「ああ、ごめん。っていうか、ありがとう。うん。つまり、その…」と、ブランドンは手を小さく動かした。


「礼なんかいいさ」ジェイクは口ごもりながら、そう返事を呟いた。彼の体が予期せぬ接触に緊張するのにつれ、彼の指はゆっくりとブランドンの腕に食い込んだ。


ブランドンはジェイクを見上げ、二人が触れているところからチリチリするような疼きを感じたりするな、と自分自身に命令した。彼らは数回鼓動が打つ間その場に立っていた。それからブランドンはふと、ジェイクは彼が動くのを待っているのだと気づいた。彼は素早く視線を落とした。「あー、僕、シャワーを浴びるよ」彼は早足に前に足を動かした。


ジェイクはヤケドしたように彼を放し、そのままの腕の状態で指を広げたまま、彼から離れていくブランドンを前に、その場に立ちつくしていた。「着替えを出しとく」


ブランドンはうなずき、指示に従ってバスルームへと入ると、ドアを閉め、とにかく疲れきって、どさっとトイレの便座に座り込んだ。一晩によくても五時間しか睡眠時間をとれないという事実をもはや無視できなくなってきているということは、とっくに分かりきっていた。彼は両手で顔を擦り、体を傾けてシャワーを出すと、服を脱ぎ、脱いだ服を空いているタオル掛けに掛け、靴をラグマットの上に置いた。シャワーカーテンを押し開けて中に入ると、冷えてべたつく肌を打つ、熱いお湯にうめき声を上げた。


廊下では、ジェイクが立ち尽くしていた。彼が何かバチ当たりなことをしたとでもいうのか? この潜在的な最悪の事態がどんなことになっていくというのだろうか? ブランドンとの間に距離を置かなければならなくなるだろうというのは確かだったが、それはシーズンが終わるまでは不可能に近い、ならばいっそのこと、―駄目だ。感情のままに行動することなどできない。それは問題外だ。そうでもないのか? 彼は頭を振り、なんとか体の硬直を解いた。まず客室へと入り、彼の昔の部屋だ、ベッドにちゃんと洗ったシーツがかけてあることを確認した。それから自分の部屋に入って、ゆっくりとクローゼットを探り、ブランドンが着られるようなものを探した。ジェイクは、スウェットとTシャツを並べながら、水音を聞いていた。彼にパンツをやる…というのはまずいことなのか? これがトロイやジョナサンが泊まっていくというのなら、彼はパンツをやるだろう。彼はため息をつき、ボクサーショーツを一枚取り出して、他の着替えと一緒にベッドの上に投げた。それからベッドの足元のベンチに腰を下ろして靴紐を解き始めたが、ついに一日の疲れが追いついてきたのか体はのろのろとしか動かなかった。


いつものカラスの行水よりは少し眺めにシャワーの中にいたブランドンは、片腕で体を支えながら、このままでは立ったまま眠りに落ちてしまうという危険に直面していることを自覚しながらも、まだ雨の中のジェイクのことを考えていた。ブランドンは唇を噛んだ。まったく、こんなことはやめなくては駄目だ、さもないとそのイメージが頭を満たして、離れなくなってしまう。彼はシャワーを止め、タオルを掴んで、濡れた髪は別にして、可能な限り乾いた感じを実感できるまでごしごしと体を擦った。幸いにも、タオルは特大だった―ジェイクの特大の体を楽に包めるように、と、邪悪な小さな声が響いた―そしてブランドンは壁に額を数回打ちつけてから、タオルを腰の周りに巻きつけ、ドアを半分開けてベッドルームを覗き込んだ。


ジェイクはベッドの足元に立ち、濡れたアンダーアーマーを少し苦労しながら脱いでいた。冷えと濡れのせいで、肩が痛み出していた。彼は、シャツをやっと頭から引き抜くと、うんざりしながら床に放り、短い髪を両手で梳いているところで、ドアが開いていることに気づいた。「よう」彼は驚いてそう言ったが、まるでブランドンが出てくることを全く予想していなかったかのようだった。「俺、あー、お前がどんな格好で寝るのが好きなのかわからなかったから…」ジェイクは少し顔を赤くして、ベッドから服の塊を全部取り上げると、それをもってブランドンに近づいたが、服を手渡しながらも視線はそらしていた。


ブランドンは服を受け取り、小声で礼を囁いた。彼はジェイクが腕と肩をできるだけ動かさないように抱えているのをめにした。「これに着替えて、濡れてるものを取ったら、バスルームを空けるから」ブランドンはそう言いつつ、目の前の男がこれ以上の痛みに苦しむことになる前に、熱いシャワーが助けになるといいと願った。


「慌てなくてもいいぞ」ジェイクは後ろを向きながら、静かにそう言った。彼は、つかの間どうすべきなのか確信が持てないまま、その場でぐずぐずしていた。最終的に、彼はぐしょ濡れのグレーのアウェイ試合用のズボンをはいたまま寝室を出て、足を引きずるようにして廊下を歩き、階段をどたどたと下りて、薬を探しにキッチンへと入った。


ブランドンはジェイクが歩き去るのを見つめていた。疲れすぎで、ぴっちりしたズボンに包まれたジェイクの尻から目をそらすことすら出来なかった。その代わりに彼は目を閉じて、後ろを向いた。バスルームに戻り、彼はタオルを落としてボクサーショーツとTシャツを見につけ、ジョギングパンツをどうしようかと考えた。今や体もかなり温まっていたから、彼はジョギングパンツをたたんでシンクの上に置いた。彼は濡れたものと靴を全て集め、廊下へと出て階段に向かいながら、袋かなにかをもらえば、濡れたものを全部詰め込めるな、と考えた。


ジェイクは目を閉じてカウンターのところに立っていた。片手には錠剤の瓶を握り、もう片方の手は花崗岩のカウンタートップの端を掴んでいる。彼はするどい痛みや怪我には対処することができる。しかしこの鈍痛やうずくような痛みというのには消耗させられる。彼は背後からの柔らかい裸足の足音を耳にして、目を開き、薬瓶をキャビネットの元の場所へと戻し、慎重にドアを閉めた。「必要なものは全部あったか?」ジェイクは、普通の声が出ていてほしいと願いつつ、そう尋ねた。


「うん」ブランドンは静かに答えながら、ジェイクの体が痛みに緊張しているのを見て取り、それが声にも影響を及ぼしているのを聞き取った。「この濡れたものを入れる袋を取りに来たんだ。僕はどの部屋で寝ればいいのかな。君に迷惑はかけたくないんだけど。絶対君だって僕と同じくらいにはヘトヘトなんだろうからね」


「ああ、俺の昔の部屋にベッドを用意してある」ジェイクはゆっくり振り返りながらそう答え、カウンターの上の半分空になったゲータレードのボトルを掴んだ。生徒の一人がバスに置き忘れていったものだが、ジェイクは全く選り好みはしないたちだ。彼は錠剤を口に放り込むと、きついレモン味のドリンクでがぶっと飲み下し、全身を振るわせた。「スーパーの袋があるぞ」彼はそう申し出ながら、再び震えに襲われ、顎をガチガチ鳴らした。


「オーケイ」ブランドンは、言いながら同情に身を竦ませた。「ジェイク、何か僕で助けになれるようなことないかな?」彼は尋ねた。彼を見ているだけでも辛かった。


「助け?」一瞬、借り物の服の非常に薄い布地に包まれたブランドンに気をとられつつ、ジェイクは戸惑った様子で聞き返した。ジェイクは、自分自身がその服を着ても、今のブランドンほど似合っているのだろうかと考えた。


筋肉が走っている場所を正確に把握しているブランドンは、片手を挙げて凝った肩にそって親指をそっと動かした。「君は痛いから、肩を庇っているけど、ここが固まっちゃってるんだよ」と、彼は冷静に言った。


ジェイクは思わず体を強張らせ、触れる感触に身震いした。「ああ、そこだ、あー、そこが時々うずくんだ」彼は、そう低く呟きながら、視線をどこに落ち着かせたものか決めようとした。「変に庇わないようにはしているつもりなんだが」彼は、そう付け加えながら、必死に何か話すことを探そうと努力した。


「君、何か筋肉痛用の軟膏を持ってるだろ? まずシャワーを浴びて、そしたら僕がそれを塗り込んであげるよ。そうすれば君も少し楽になるだろうからさ」ブランドンは、自分を制止する前に、そう口にしてしまっていた。ジェイクの肩がそんなふうに痛むためには中で何が起こっているのか、彼には、知識として、わかっていた。筋肉や靭帯が引き伸ばされ、痛めつけられて、引きちぎれたり、引き攣れたりしているのだ。彼には、全ての筋肉がどんな風に重なり合っているのか、どこが一番痛いのか、一番ひどい懲りの原因となっているのは何なのかがわかる。それは、単純な解剖学だ。


ジェイクは不安げに顔をしかめて彼を見たが、しまいには素直にうなずいた。これほどの痛みを軽くしてくれるというのであれば、なんだってするというのが、正直なところだった。ブランドンはうなずいて、手を離した。「じゃ、いっておいで」科学教師はそう急かした。彼は自分で袋を探せるだろうし、そうでなければ、間に合わせでカウンターの上に服を掛けておいてもいい。


ジェイクは唇を舐め、ゲータレードを置くと、ブランドンを迂回して、ベッドルームとシャワーに向かった。「袋は食料庫の中だ」ベルトを外しながら、彼は肩越しにそう声を上げた。「っていうか、服はカウンターに置いとけよ。俺のと一緒に洗濯機に放り込んじまおう」と、彼は言い足した。「明日も試合だ」


うなずいて、ブランドンは洗濯物をシンクの脇に山にして置き、じっくりと時間をかけて窓越しに雨を見つめた。二階から聞こえる水音に意識を漂わせた。明日も試合だ。午後遅くのホームでの試合だ。ということは、明日はそんなに大慌てする必要はないということだ。彼にはゆっくりとした休息が必要だし、ゆっくり休まなければならない。


ジェイクはまだ湯気の残ったシャワーに入り、熱いお湯が肌を打つと静かに呻いた。たった一晩ブランドンが廊下をはさんだ場所の泊まるだけだ。自制心を失ったりしないでいられるさ、だろ?


そうさ。


彼は素早くシャワーを浴びて、熱いお湯で冷えた体を温め、凝った筋肉を緩めた。シャワーからもらえる全ての恩恵を受け取り終えると、彼はシャワーを止め、少しためらった後、シャワーを出て、柔らかなタオルで体を拭いた。彼は唇を固く引き締め、それからシャワーに入る時に何も着替えを持ってこなかったことに気づいてするどく悪態をついた。特大サイズのタオルを腰に巻きつけ、彼は湯気の立ちこめた部屋から、ためらいがちに踏み出した。


シャワーの音が止んだ時、ブランドンは頭の中であれこれ考えていた。彼は階段の方へと数歩歩いたものの、立ち止まり、冷蔵庫へと戻って、ジェイクのための何かまともな飲み物を探した。ビール。ビール。コーラ。ビール。よし! ゲータレードがあった。彼は二本掴んで廊下に向かった。


ジェイクはタオルを掴みながら、引き出しをかき回し、ボクサーショーツとTシャツをもう一枚ずつ探した。ブランドンが近づいてくる物音を聞いた途端、両肩が再び緊張するのを感じた。ったく、こんな感情は振り切らないと駄目だ。だんだん馬鹿らしくなってきた。


戸口に立ち止まって、ブランドンはボトルを振った。「ゲータレードを持ってきた。筋肉の痙攣を鎮めるのに役立つから」彼はそう言ったものの、それがどれほど馬鹿げてきこえるか承知の上だった。しかし、彼は、彼の視界を満たした、うっすらと毛に覆われた巨大な筋肉質の裸から何とか目をそらし続けるので精一杯だったのだ。


「うう~」ジェイクはボトルを受け取って、そう反応した。「馬用軟膏(筋肉痛などに効く)は、そこの引き出しだ」彼はボトルのキャップをあけつつ、二人に近いベッド脇のテーブルを指してつぶやいた。


ブランドンはベッドの端に座り、言われた引き出しを引き出した。中を覗き込んですぐ、彼は薄氷の上に立っていることを知った。小さな潤滑剤の丸いボトルが、何冊か積まれた雑誌の上に転がっている、雑誌はたまたま表紙が下になっていて、わざわざ見ようとしないかぎり、ブランドンはタイトルを見ることはできない。他にはアコーディオン状になった未使用のコンドーム、筋肉痛用のサーマフレックス軟膏の大きなチューブ、テレビのリモコン、角の折れたジェイムズ・パターソンのミステリー小説が一冊。特別ショックを受けるほどのものはない。ブランドンがサーマフレックス軟膏を取り出すと、二枚の写真が出てきた。一枚を半分隠すように、もう一枚が重なっていて、彼はそれをチラッと見てしまった。一枚目はジェイクともう一人の男がそれぞれ両腕を相手の体に回して、二人でカメラに叫んでいるように見えた。周囲の景色からすると、ニューオーリンズのマルディグラカーニバルのど真ん中にでもいるようだった。もう一枚は、白黒の芸術的な、―そして刺激的な写真だった。ブランドンは、数瞬遅れて引き出しを閉めた。


ジェイクは、その引き出しに入れておいた色々なものを思い出して、体を硬直させたが、ブランドンの手を止めるにはもう手遅れだった。彼は、目の前の男の反応を注意深く見つめた。そこには、「コーチはペニスが好きだ」と叫んでいるような兆候はこれと言って見て取れないが、頭のいいヤツの反応はわからないものだ。そういうタイプは、ジェイクが良く知っている輩とは、異なった考え方をする。そういうタイプは、物事をより大きな視点から考えるものだ。彼はブランドンがどんな反応をするか立ち尽くして見守っていた。


ボトルを振り、科学教師は顔を上げて、ジェイクに彼の前に座るよう身振りした。彼は二枚の写真をどんな風にでも好きなように解釈できるが、それは彼ら二人の関係を損なうようなものでは全くない。全く違う。望みを持つのは勝手だが、そんなことをしたら、事態をもっと望まない方向に導くことになる。例えば、この執着をもっとひどくするとか。彼は軟膏をいくらか指に搾り出した。「右の肩、だったよね?」と、彼は冷静に尋ねた。


「ああ」ジェイクは静かに答えてベッドの端に腰を下ろし、期待を込めてブランドンを見上げた。実際のところ、タオル一枚であることに感謝していた。ある意味、服を着ているよりもあるものを隠せる気がする。


ブランドンは軟膏をジェイクの肩のラインにそって軽く伸ばした。「傷めたのは斜角筋、それとも僧帽筋か、三角筋なのかな?」彼は、そう尋ねて、ジェルを塗りこみ始めた。


「筋肉っていうより、腱とか靭帯とかってやつだ」と、コーチは言った。「酷使しすぎたせいで骨棘ができちまってな。俺が痛いって言ってるのが、ただの不平なんかじゃないって気づいてもらった時には、すっかり手遅れになってて、お払い箱になって家に送り返されるしかない状態になってた」と、彼は、ブランドンの手が彼の肌の上の動くのに合わせ、とりとめもなく話し続けた。「だけど、痛むのはほとんどここに沿ってだ」彼は、肩の前側に沿って痛の筋を指でなぞりつつ、質問の答えを追加した。


ブランドンは軽いタッチで擦り込み始め、軟膏が浸透していき始めるまで、ゆっくりと指の握りを強めていった。指で同じラインを辿る。「ここは烏口肩峰靱帯だ。烏口突起、肩峰―」彼は指をジェイクの鎖骨に沿って滑らせた。「そして、上腕骨頭をひとまとまりにしている」彼は塗りこみを終わらせて、軟膏の残りをジェイクの肩の付け根のふくらみに擦り付けた。「きっとすごく痛かっただろうね」


「痛かった」ジェイクは、右から左に解剖学的名称を素通りさせ、小声でそう言った。彼はその代わりに、自分に触れる温かい手、全くなじみのない男から漂う、自分のシャンプーと石鹸の馴染み深い香りに意識を集中させた。彼は、ジェルが液体に変わっていくのにつれ、頭を横に向け、目を閉じた。ブランドンが肩の筋肉を押し、擦り、撫で、擦り、また撫でて、肩の周辺から乳酸を押し出し、筋肉が落ち着いて楽になるように努力している間、彼の両手の下で、彼の肌は温まっていった。


同じ動きを何度も繰り返しながら、ブランドンは隣の男が発する熱に捕らわれていた。ジェイクは目を閉じていたので、ブランドンは、この機会を捉えて、彼の顔立ちをじっくりと観察した。歯を噛み締めるのに合わせ、顎の筋肉がびくっと動いたが、それを除けば、彼の顔は穏やかで、ほとんどのどかといってもいいくらいだった。


ジェイクがこれまで何年もの間、何度となくこんな風な治療を受けてきたのは明らかだった。彼は肌についた軟膏に冷んやりした空気が触れると、激しく体を震わせた。ブランドンは男の顎の下へと手を持ち上げ、顎骨の後ろに指を沿わせて関節をマッサージした。「リラックスして」彼は厄介な歯軋りを止めようとしながら、そう要求した。「君は一箇所がリラックスすると、別の場所が緊張するんだ」声にあまり心配が出すぎないようにしつつ、そう呟いた。「こんな調子で眠れるのかい?」


ジェイクは顔をゆがめて笑顔をつくり、目を開いた。「ヤクと酒は助けになるぞ」と、彼は返事をぶつぶつとつぶやく。


奇妙な緊張の瞬間は軽くなって、ブランドンは頭を振った。「君専用のマッサージ師を雇って、ゆっくり湯船に浸かるべきだよ」そう提案し、最後の軟膏を塗りこみつつ、こんなに早く浸み込んでしまわなければいいのにと思った。


「なんだよ、お前、週末働くか?」ジェイクは小さく笑ってそう聞きながら、ブランドンと目を合わせた。ブランドンの瞳は緑と青が奇妙に交じり合っている―まるで緑がかった海のようだ―そのことに、今まで気づいていたのか、ジェイクにははっきりせず、彼は他に何を言おうとしたのかも忘れて、目の前の男を見つめた。


ブランドンは面白そうに目じりにシワを寄せ、体を伸ばして横たわったジェイクを目の前にしたら、その体に何をしたいだろうか、と考えた。ファック。比喩的にも、まったく。文字通りでも。頭を下げろ、坊主! だ、全く。彼が興味を持つことなんか絶対にないんだ。「きっとなんとかできると思うよ」しかしブランドンは自分の考えを検閲せずにそう答えてしまった。彼はごくっと喉を鳴らし、混乱状態に陥った。「だって、解剖学と生理学の学位を持ってる人間って、そう沢山はこの辺を走り回ってないだろ?」


ジェイクは片方の眉を上げ、にやりと笑った。「見返りに何を期待してるんだ?」と、彼はからかった。「俺、バーベキューの腕はかなりのもんだけどな」彼はそう申し出た。


ブランドンがにっこりすると、その目にあかるい光が閃いた。「バーベキューか。いいね」と、彼は答えた。「眠る場所、っていうのでもいいよ」彼はそう言った。あくまで今晩のこと、そしてジェイクがさっき言った客間のことを考えたのであって、他のなにものでもない。


ジェイクは少し目を見開き、頭を傾けた。目の前の男が、今彼の頭に浮かんだようなことを意味して言っていればいいのにと思いつつ。「お前、痛みをいくらかでも減らすためなら、俺が体でも売るだろうって言ってるのか?」と、彼は冗談っぽく尋ねた。「それ間違ってないかもな」彼は静かに笑い声を立てた。


ブランドンは一瞬パニックの発作に襲われたような気がしたけれども、ジェイクがからかっているのだと気づくと、その感覚は薄れていった。彼は微笑み、そこまで意味ありげなコメントに対して、山のように浮かんだ返答をより分けながら唇をひくつかせた。「どうだろう、そんなオファーに見合う腕を僕が持ってるといいんだけど」彼はなんとかそう返答し、両手を自分の腿のところに落とした。軟膏も、彼に触れるための口実ももう消えてしまった。


ジェイクは判読できない黒い瞳で彼を見上げ、硬い笑顔を見せた。「ありがとな」彼はうまく声を出せずにそう囁いた。


突然、ブランドンの胸と腹の中の緊張がもう避けられない、そして耐えられないくらいになり、今動かなければ、本当に、本当に、無分別なことをしてしまいそうだった。だから彼はうなずき、立ち上がった。「おやすみ」と、彼はそう呟き、軟膏のチューブを引き出しに戻し、ドアへと向かった。


「おやすみ」ジェイクは、頭を下げて座ったまま、実際にしゃがれ声を出した。歩き去っていくブランドンを目にしたら、タックルしてしまいそうだった。


ブランドンは裸足で廊下を進み、ベッドが使える状態になっている部屋を見つけ、中に入った。ジェイクの部屋からの灯りだけで、十分に部屋の中が見えた。彼は慎重にベッドの端に腰掛けた。高まった鼓動が、今だけは疲れを押しのけているようだった。ああ、神様。もう手遅れだった。彼はもう完全にジェイクに夢中になってしまった。もしほんのわずかでもジェイクに気づかれたら、最悪の結果になることは確かだ。あのからかい、あれはジェイクの声に秘められた何かに突き動かされたものだった。それは何か本能的なもので、ブランドンはそれがなんなのか今にも見て取れそうで、理解できそうで、でもはっきりしなかった。親密さを増した友情、っていうことか? 二人の同僚の間に築かれた信頼? 角突き合わせる代わりに、仲良くする方法を見つけようとする二人の男か? じゃなければ―彼の体が彼に考えさせようとするある考えに、彼は後ろに倒れて身もだえした―何か現状以上のものを求めて探り合う二人の男? ブランドンは寝返りを打って、頭の上に枕を被せた。

ジェイクは、タオル一枚のまま、その場にもうしばらく座っていたが、しまいに一度長い一続きの息を吐き出した。彼は立ち上がり、歩いていって、灯りを消し、床にタオルを落とすと、ベッドに潜り込んだ。裸で、軟膏の匂いに包まれて。



***



読んでくださっている方は、非常に限られたメンバーのように見受けられるので…。



もう一章だけ?なら?




その内、投稿しちゃっても、大丈夫かな?



Manhandled Dean




Slash のもはや一ジャンルと言ってもいいのではないかと思う、ある意味王道の形式というか、フォーマットのようなものがあって、それは、




誰々が、〇〇した、5回の時(or 事)





という、短いお話の集合体となっているFanficです。



〇〇の部分が様々に変化するわけですが、

とある一つのテーマを据えて、主人公となる「誰々」が、全く異なる状況で、「〇〇」に遭遇するシーンを5つ立て続けに書く、というものです。



たぶん様々なFandomで活用されている形式だとは思うのですが、大抵の場合、前後の説明もなく、あるワンシーンを切り取った短い断片的な文章となるため、

いまひとつ…な腕前の作家さんだと、テーマから微妙にピントがずれてしまったり、「んんん?」と、なかなかシーンの状況解読ができなかったり、

いいプロットだと逆に、「もっともっと長~く読みたいっ!」と、欲求不満が残ってしまったりと、

人によっては、このタイプのSlashはあまり好みじゃない、と言う方も見かけます。


でもまあ、それぞれ数分で読み終わるような短いお話が五つ固まったものなので、

書き手さんにとっても、読者にとっても、たまの息抜きという感じで気楽に書けて、気楽に読める楽しい作品になることも多い、という意味では、

好みのテーマのものを見つけると、とりあえずざーっと目を通してみたくなるお話であるといえます。



***



ということで、今回ご紹介するのは、またもや freshflutter さん…で、


 (Gordon/Dean, Alastair/Dean, Sam/Dean, 3.4k, nc-17)

ディーンが力ずくで身体を自由にされた5回の時(ちょっと誤解を与える書き方かしら…)



という作品。





彼女がこのお話を書くことになった経緯というのは、以下のとおり:

Couple of weeks ago, during the course of a weekend spent watching SPN and the Jensen-highlights of Dark Angel, bertee and I agreed that we enjoyed Dean being manhandled to the extent that he should be being manhandled by someone whenever he is on screen.

To combat the sad fact that the show runners probably won't go in this direction, we have both written 'five times Dean was manhandled' fic. I'm afraid my writerly mojo is a bit borked currently, but here is my offering. bertee will be posting hers at some point – I'm not exactly saying you should all go camp out on her journal, but I would certainly not judge if you did.

This is not beta'd, or ameripicked, and is purely to indulge in the kink of manhandled!Dean so please do not be expecting stunning literary insights.


bertee というお友達と、SPN およびダークエンジェル(Jensenが出てる回ばっかり)マラソンをした彼女は、Deanという人は、画面に出ている限り、誰かから常に力ずくで「manhandle」されているべきであるという結論に達したのでした。

とはいえ、ドラマの制作サイドはこの方針に同意してくれそうもないので、Deanが「manhandle」されているシーンばかりを集めた短いお話を自分たちでちょこっと書いてみることにした、というもの。






Manhandle という単語を日本語で一言で言い表すのは難しいですが、

特にSlashなんかで使われる時には、

「相手の意思に逆らって、もしくは相手の意思を無視して、力ずくで好きなように相手の身体を動かしたり、移動させたりする」

という意味合いが強くて、もちろんワタクシのような、完全 Sammy(Jared)Top 推奨派としては、

Dean(Jensen)が、Manhandleされるお話というのは、微塵の迷いもない「大好物」ということになります。


今回ご紹介する「Five Times」ficlet も、短いながら、それぞれに大変上手くポイントをついたいいお話になっています。

(実は、お友達の berteeさんも、ほぼ同時に、「5つの場合」を投稿していたのですが…、私の好み的には、「んんん?ん~~…」なパターンだったかな…。
もちろんこういうタイプのお話こそ、作家さんとの相性というものが大きくなってくるという事実はあるにしても、才能の差、というものも大いに感じてしまいます。)





5つの小さなお話、それぞれ全部良い味を持っているけど、僅差で一番のお気に入りに挙げたいのは、トップバッターでもある「RoboSam(=SoullessSam)」のお話でしょうか。



大変短いお話なので、流し読みに日本語をつけてみます。

(本当に、いい加減につけた日本語ですので、大きく間違っていたり、意味がとれなかったりしたらあしからず、ということにしておいていただけるとありがたいです)



「RoboSam」




Dean isn't a small guy, Sam's just bigger. Bigger and taller and stronger, and none of that is a problem when Sam's his usual awkward and overgrown self, because what Dean lacks in size and power he makes up for in sheer badassery, and Sam respects that. But without a soul, Sam just doesn't understand how that greater weight and strength should operate in relation to Dean, how it relates to their relationship.

ディーンは小柄な男じゃない、ただサムがもっとでかいだけだ。ディーンよりも大きくて、背が高くて、力が強い、それって、不器用で、育ちすぎの子犬みたいないつものサムだったら、なにも問題になることじゃない。だって、大きさや力でかなわないところは、ディーンの生粋のクールさで補えているわけだし、サムもその辺は尊重してくれてるから。
でも魂が抜けてると、サムって奴は、体重や力強さの優位性というものを、ディーンに対しては、加減して使うべきなんだってことを全く理解しないのだ。そういった体格や力の差を二人の関係にどう関連付けるべきかってことを。



That, in Dean's opinion, is RoboSam's whole problem: he just doesn't get their dynamic.

ディーンの見解からすれば、それこそが、ロボサムの問題の全てをあらわしていると言える。つまり、魂の抜けたサムは、二人の間の力関係ってものをまるで分かっていないのだ。



As such, when he sees a poltergeist-propelled piece of debris coming loose overhead and falling straight at Dean, Sam doesn't shout a warning or push him out of its path or anything like that. No. He just puts his arm around Dean's waist, lifts him smoothly off his feet and sets him down in a new, less dangerous spot.

というわけで、ポルターガイストが吹っ飛ばした瓦礫の破片がディーンの頭の上に真っ逆さまに落ちてくるのを目にした時、サムは警告を叫んだり、破片の落下経路からディーンを押しのけたりとかっていうそんなようなことを一切しなかった。しなかったのだ。サムは、単に片腕をディーンのウエストに回すと、ディーンをひょいっと持ち上げ、新たな、あまり危険じゃない場所に、ぽんっと降ろした。



It's not only the sensation of having his ribcage jerked up around his shoulders that keeps Dean from reacting immediately; there's a lot of stunned indignation to deal with too.

ディーンが素早く反応できなかったのは、肋骨をサムの肩でぐいっと押し上げられた衝撃によるものだけじゃない、とっさに対処しなければならない怒りが一挙に溢れかえっていたからだった。



Eyeing the point of impact curiously, Sam nudges Dean a few inches further out of the way. "This place is a deathtrap, man. How the hell are we supposed to find the bones when pieces of house keep falling on our heads?"

瓦礫の落ちた場所を興味深げに眺めながら、サムは、もう数インチ、ディーンを遠くに押しやった。「この場所はまるでデストラップが仕掛けられてるみたいだな。ひっきりなしに頭の上に瓦礫が落ちてくる中で、どうやって遺骨をみつけろっていうんだ?」



"Don't," Dean manages at last. "Don't you. Just." He points a finger in Sam's direction, who regards it with the same placid interest with which he reacts to everything that's a part of finer feelings these days. "Don't ever, ever do that to me again."

「やめろ」ディーンは、やっと声を絞り出した。「お前、もう。とにかく」彼は、サムの方向に指を一本突き出したものの、サムは、彼があらゆるものに向けるのと同じ落ち着き払った態度で、その指をじっと見ている。近頃では、これが繊細な感情っぽいものってことになっているのだ。「おまえ、二度と、二度と俺に対してこんなことをするなよ」



Sam's brow creases. "Do what?"

サムは眉をしかめた。「何を?」



Dean doesn't even like having to clarify. Saying the words makes it all a little harder to forget what just happened. He squeezes his eyes shut as he says it. "Pick me up like that. Don't do it. It's just… not cool."

ディーンとしては、はっきりと口にもしたくないところだった。言葉にすることによって、たった今起こったことをちょっと記憶に焼き付けてしまうことになる。彼は両目をぎゅっと閉じて、口を開いた。「あんな風に、俺を持ち上げたりすることだ。あんなことはするな。あんなのは、とにかく…クールじゃない」



"It was gonna fall on you. And we don't have time for you to be concussed. This is a two-man job."

「瓦礫は、兄貴の上に落ちるところだったんだぞ。俺たちには、今兄貴に脳震盪なんか起こされてる暇はない。これは二人っきりの仕事なんだからな」



"So you open your big flappy mouth and warn me next time."

「だったらこの次は、お前のそのでっかくて締まりのない口を開いて、俺に警告しろ」



"Warn you that I'm gonna pick you up?" Sam asks, frowning even harder.

「俺がこれから兄貴を持ち上げるぞって、警告しろって?」サムは、さらにしかめっ面になって聞いた。



Dean's patience is fast evaporating and it sounds it in his voice. "No. Warn me that there's a Wicked Witch of the East burial coming my way."

ディーンの堪忍袋の緒は急速に細くなっていき、その事実はディーンの声音に現れていた。「違う。この先に悪い東の魔女が埋まってるぞって警告しろって言ってんだ」



Sam shrugs. He looks back upwards, through the punched hole in the ceiling, to where the upper levels of the house shift and creak. "Easier just to move you someplace else."

サムは肩をすくめた。彼は、再び天井を見上げた。天井に空いた穴の向こうでは、上の階がずれて軋みをあげている。「兄貴を移動させた方が簡単だ」



"It really isn't," says Dean. He straightens himself up like he's getting ready to throw a punch, rolls his shoulders as though it might fool Sam into thinking he's bigger than he is. "You want me to prove it?"

「まじで、そんなことはないんだ」ディーンは言った。彼は、今にもパンチを繰り出そうとでもするように背筋を伸ばし、両肩をまわした。そうすることで、サムが、自分のことをサムより大きいと騙されて思ってくれるとでもいうように。「証明して欲しいか?」



Sam sighs a long-suffering sigh, looks upwards and points without a word. Dean follows the direction of his finger – and takes a piece of falling timber to the shoulder.

サムは、長く重々しいため息を一つつくと、上を見上げ、無言で指差した。ディーンは彼の指さす方向を辿り-落ちてきた木材の欠けらを肩に受け止めることになった。



He grunts, staggers, and goes down on his knees. Sam looms over him, taller than angels, a dusty halo of light around his head where the daylight pours through the demolition.

彼は呻いて、よろけ、両膝をついた。天使よりも丈高くディーンの前に立ちはだかったサムの頭の周りには、崩壊した穴から差し込む日光が降り注ぎ、埃っぽい後光が差している。



"You need a little help?" Sam says.

「手を貸そうか?」サムが言った。



Dean clutches blindly at his hand, and he's making a good attempt at getting back on his feet – particularly impressive considering half his body is still ringing with pain – when Sam sighs again, sweeps Dean's legs out from under him, picks him up and starts walking.

ディーンは、ろくに考えもせずにその手を掴み、なんとか立ち上がろうとなかなかの努力を始めた-身体の半分がまだ痛みでビリビリしていることを考えれば、感服ものの努力だともいえる-そんな時、サムは再びため息をつき、ディーンの両脚をすくい上げると、ディーンを抱き上げて、歩き出した。



"Easier this way," he says simply.

「こっちの方が簡単だ」 彼は、そっけなくそういった。



And though he might be right, and though it means crawling out of the danger zone on all fours, Dean still punches him hard enough in the neck to get him to drop him.

サムの言い分は正しいかもしれない、そして、この行動により四つん這いで危険ゾーンから這い出さなければならないハメになるだろう、それでもディーンは、サムの首筋にキツいパンチをお見舞いして、彼を抱くサムの腕から落ちてやった。



He may not have the muscles, but he has his badassery.

腕力ではかなわないかもしれないが、ディーンはクールな男なのだ。




***




五番目の、普通の(?)サムとの濃厚な NC-17シーンを切り取った Ficletも好きです…。

父ちゃんや、ゴードンとの話も、それぞれ良い味出してる!っていう感じなんですけどもねー。


2011年9月30日金曜日

Caught Running 第四章



Jake と Brandon 、なかなか仲良しシーンが出てきませんね!




こんなに仲良くなるまで引っ張ってたの?




もうこの際だから!ということで、もう1章、続きを投稿させていただきます。







どうぞ、引き続き、息を潜めて、こっそり読んでいただければと思います。









『Caught Running』













第四章




「他にも誰か疲れたなんてグチりたいやつはいるか?」と、ジェイクは、標的となった運の悪い子供が、グランド5周のノルマの一周目を始めるとまさに叫び声をあげた。彼の声の様子はいつもと違っている。ジェイクはいつも叫んでいる。でも叫ぶのとキレるのとは別物で、ジェイクはほとんどキレることはない。今日の彼はしかし、キレていたし、子供たちはそれを感じ取っていた。日暮れは迫っていたが、誰一人として練習が終わりに近づいているなどという希望を持ちはしなかった。トロイですら、眉をひそめてジェイクを眺め、子供たちを注意深く見守っている。彼は、割って入りたそうにも見えたが、明らかにトロイもこんな機嫌の時のジェイクには近づくべきでないことを経験上知っているようだった。彼はまたジェイクがどんなに機嫌が悪くても、決して子供たちを傷つけるようなことはしないということも知っていた。

ブランドンは近くに立ち、身がすくむのに近い感覚を覚えたが、それはジェイクの言葉よりも、その声の調子に対してだった。それにしてもキレて怒鳴り散らす声というのはいたたまれない。ブランドンは、もしジェイクが本当に子供たちを虐待するようなことをするなら、素晴らしいコーチという名声はありえないことは承知していた。さらに、ブランドン自身の心に秘めた意見としても、子供たちはもっと走り込む必要があると思っていた。彼らは耐久力を強化する必要がある。何人かの子は、一マイルと持たずに脱落してしまうくらいだったから。

ついにジェイクは、いまいましげに子供たちの練習をやめさせ、子供たちに背を向けながら、一言も発することなしにグランドから出て行けと手を振った。ゴロのエラーに、ボールの取り損ね、一マイルも的を外したバッティング、極めつけは、そうでなくても彼の神経に障る泣き言を言うやつら、そんなことが際限なく続いた。自分はこんなところにいていいのかという疑問が湧いてくるのは、こんな日だ。他のコーチたちはただ静かに待っていた、唸り声をあげる虎を突つくべきでないことを承知しているのだ。トロイすら大人しくしているというのは、ブランドンにとっては驚きだった。

ジェイクは他の男たちに唸ってみせ、頭を振った。「ビールだ」と、男たちの前を通り過ぎながら、彼らに向かい怒鳴りつけるように言った。肩をすくめ、ブランドンは先頭を切って、ジェイクの後に続いた。コーチたちは今夜、ヘッドコーチの家に行くことになっていた、ジェイクの悲惨な機嫌にも関わらず、その約束はまだ生きているのだと、彼は推測した。「君たち、僕の車に乗っていくかい? 終わった後、またここで降ろしてもいいよ」と、彼はトロイとジョナサンに申し出た。

「その申し出を受けさせてもらうよ」と、ジョナサンが笑顔を見せる横で、トロイが首を振った。

「ありがとな。だけど俺はいい」トロイはそう答え、彼らの前方を大またで歩くジェイクを見やった。「ジェイクは今日、車で来てるから…」彼は、ジェイクが古いシボレーのトラックへと歩き、彼の用具バッグを後部座席に乱暴に投げ入れるのを目にして言葉を途切れさせた。ジェイクはいつも必ずバッグの扱いには十分に注意を払っているのに、だ。「実際のところ、うん、頼むかな。俺、助手席に乗る」トロイは彼らに向かい、そう言った。ジョナサンは彼に顔をしかめて見せて、三人はブランドンの車へと歩みを進めた。

ブランドンは鼻を鳴らし、皆が乗り込めるようドアの鍵を開けた。「ライムの上に座るなよ」と、彼は今にも助手席に飛び乗ろうとしたトロイに警告した。床には、六本入りのコロナの瓶も積んである。

「これって法律違反じゃないのか?」トロイは、シートに滑り込み、床からビールを引き上げるとそう訪ねた。「くそっ! ジェイクのやつ、俺にはキャンパスにアルコールを持ち込んじゃ駄目だって言ったんだぜ」と、彼はふてくされて、ドアを閉めた。

後部座席でジョナサンが笑い声をたて、トロイの頭をぽんっと叩いた。「それは君がランチ用に持ち込もうとしたからだよ」

「くそったれ」トロイはせせら笑いを浮かべ、ビールを抱きしめた。「お前ら皆くそったれだ」彼がそう宣言した時、ジェイクのトラックが彼らの横に来て停まった。

「俺んちに集合な」ジェイクはトラックの窓から頭を出して彼らにそう言った。「俺はひとっ走り店まで行って、何ケースか買ってくる、お前ら皆、先に行っててくれ」

「僕にコロナをもう一パック買ってきてくれないかな、僕が持ってきたコロナにトロイがすっかり愛着を感じちゃってるみたいなんで」ブランドンは、今や透きとおったボトルに向かってささやきかけるような声を出しているブロンドの男を見やって、おどけて言った。ジェイクはブランドン越しにトロイを見やり、呆れ顔で目をくるっと回した。「コロナだな?」と、彼は確認のために尋ねた。

ブランドンはうなずいた。「うん」彼は手を伸ばしてトロイから六本パックを取り返そうとしたが、その手はぴしゃりと叩き落された。「ろくでもないやつだな!」彼は、トロイに向かって怒鳴って見せたものの、その顔には笑顔が浮かび、後部座席のジョナサンは大笑いしている。

ブランドンが自分の権利を主張する様子を笑顔で見つめつつ、ジェイクはロッカールームでの感情が再び湧き上がってきていることをゆっくりと自覚した。「やつをライムに近づけるなよ。お前、一生心に傷を負うことになるぞ」突然の感情になんとか抵抗し、微かに声を強張らせつつ、彼はそう警告した。それ以上見つめ続けることになる前に、彼はエンジンをふかして、駐車場から素早く走り出た。

トロイに向かってぶつぶつと文句をいい、睨む振りをしながら、ブランドンは車のエンジンをかけた。「運も尽きだな。せっかくビールを持って来ても、君にくすね盗られるんだから」と、彼は低い声で悪態をついた。

ジョナサンはシート越しに体を乗り出しつつ、まだ笑い続けていた。「トロイにライムを与えたらどんなことになるか、まあそれを見てみなよ」

「それは、ああ、それはかなり見ごたえがあるぞ」と、トロイは邪悪な笑い声を立てた。「それより、なあ、ジェイクのやつなんであんなに虫の居所が悪かったんだろうな?」

「マジで、コーチ、食物繊維かなにかとった方がいいと思うよ」と、ジョナサンが言う。

ブランドンは大笑いしそうになるのをこらえた。「わからないけど。彼、最後の授業の後は、機嫌よかったんだよ」と、彼は言った。「僕が思うに、今晩の彼って、ちょっと…」

「キレてた」

「ああ」

「あいつがあそこまでキレるなんて、あん時以来だ、あの…」トロイは突然そこで言葉を切り、じっと窓の外を見つめ、それから口が滑ったとでもいうように首を振った。「よっぽど嫌なことでもあったんだろうよ」と、身動きもせずにそう言葉を終わらせた。

ジョナサンがトロイの肩を突つく。「いつ以来だって? 今日のキレ方って、今後も僕たちが目にする可能性があるってこと?」

「わかんねえ」トロイはしぶしぶと答えた。「つまり、今回キレた原因はわからねえってことだけど。前にやつが今日みたいなとんでもないキレ方をしたのを俺が目撃したのは、肩が駄目になっちまったってことをあいつが知った時だったんだ」

ジョナサンが、十年前にはどれだけ多くの選手たちが無理をさせられすぎた挙句、それが原因でキャリアを棒に振ることになったかについて熱心に語り始める中、ブランドンはハンドルをきつく握り締めた。ジェイクの肩? くるぶしと、ぶっ壊れた膝のほかに? そんな状況に立ち向かうため、彼はこれまでどれほどのことをくぐり抜けてきたのだろう? ブランドンは、ジェイクがどれほどスポーツを愛していたかについて、全く知らないという事実に気づいた。二人の男たちがおしゃべりを続ける中、彼は深く思いに沈みながら運転を続けた。

ジェイクのドライブウェイに車を乗り入れても、まだトロイはコロナをしっかりと掴んでいた。「それ返してもらえないみたいだな?」ブランドンは力なくそう言った。

「うん」トロイは満面の笑顔で答えつつ、車から降りる。

「ライムは独り占めにはさせないからな」と、ブランドンは言い返した。

「どっちにしても俺がライムちゃんを用済みにする頃には、お前はライムを欲しいとも思わなくなるさ」トロイはそう呟くと、まるでこの家の住人であるかのように、ふんぞり返って玄関まで歩いていく。彼はドアの上の隠し場所からスペアキーを取り出し、ドアの鍵を開け、むかつくような笑顔で彼らを手招いた。

ジョナサンは笑って、階段を弾んで上っていった。「早く、ブランドン。ライムが欲しいなら大至急確保しないと」彼にそう言われたブランドンは、バックパックを掴むと、階段を駆け上がり家の中へと入った。



ジェイクはそれから間もなく家に着いたが、そのまま座って、自分の家の玄関を睨みつけた。「手綱を引き締めろよ、自分」彼は両手首をハンドルに預けて座ったままそう呟いた。彼はこれまでにもこんな状況に対処した経験がある。惹かれてはならない相手に惹かれてしまうという状況に。今度も上手くやれるさ。不機嫌に鼻を鳴らし、彼はトラックから降りて、トロイに荷物を取りに来させるため、物音荒くドアを叩きつけた。そして買ってきた数ケースのビールを掴むと、玄関まで苦労して運び上げた。

車のドアが閉まる音を聞いて、ブランドンは玄関へと急ぎ、ジェイクのためにスクリーンドアを開けてやった。「トロイには気をつけろよ。あいつ、もうばか騒ぎしてるから」ブランドンが警告する間もなく、ブロンドの男が、くすね盗ったコロナの瓶をマイクに見立てて歌いつつ、靴下履きの足で堅木張りのフローリングの玄関ホールにすべり込んできた。

「ああ、なんてこった」トロイがターンをして、彼らに向かって尻を振り、気取った歩き方で退場すると、ジェイクはうめき声を上げた。「やつにライムをやったな?」彼は、ブランドンにぶつぶつ言ったものの、わずかに笑顔を見せて、荷物と一緒にキッチンへと向かう。「座れ!」と、彼はトロイに向かって、最高にばかでかくて、もっとも高圧的な声で怒鳴った。トロイは素直にソファにポトンと座り、唇をとがらせて彼を見上げた。「酔っ払いすぎちまう前に、俺たちはチームを仕分けなきゃならないんだ」と、ジェイクは彼に思い出させた。

トロイは、ふんっと息をはき、ジョナサンはドリトスの袋を抱えて彼の隣にどさっと腰を下ろした。ジェイクは軽く唸って見せて、サンルームにおいてある回転式のホワイトボードを取りにいき、それをテレビの前に据えると、大またにキッチンへ入っていって、マーカーを何本か探し出した。戻る途中、彼は冷えたビールを一本つかみ、小さな薬の壜を沢山しまってあるキャビネットの扉を開けた。



ブランドンは二本目のコロナとライムを取ろうと別のドアからキッチンに入ろうとして、キャビネットのところに立っているジェイクに衝突しかけ、ドア口で立ち止まった。「ごめん」彼は低く呟き、ジェイクを迂回して冷蔵庫へと向かった。

「問題ない」と、彼は呟いて、錠剤を掌に出し、そこから二つ取り上げた。「狭い台所は仲良し家族を作るのに役立つ」と彼は考えもせずに言った。この家は相当に広くてキッチンもそれほど狭くはないのだが、彼の母親が好んで口にしていた言葉だ。

驚きに背筋を伸ばし、ブランドンはライムを切るためまな板の方へと移動しながら、興味を持って、ジェイクを見やった。それは面白い格言だった。その言葉は、彼が生まれ育ち、今だに暮らしている家には、ぴったりだと思った。この言葉には愛情がこもっている感じがする。彼は瓶の蓋をねじあけ、瓶の口にライムを押し込みながら、ジェイクが錠剤をビールで流し込むのを見つめた。今の言葉を口にしたのが他の誰かだったら、ブランドンは絶対に何かコメントしていただろう。

ジェイクは肩越しにブランドンに視線を投げ、自分が今何を言ったのか、と、ブランドンが静かに自分を見つめていることに気づいた。「ん?」ゆっくりと顔を赤らめながら、何の気ない口調になっていることを願いつつ、彼は尋ねた。

ブランドンが必死に葬り去ろうと努力している、あの惹きつけられる感覚が、その魅惑的な頭をもたげてきて、彼は瞬きしつつジェイクを見つめることしかできなかった―今、目の前にいる男が、彼の本当の姿なのにちがいない。威張り散らしてもいない、コーチでもない、怒鳴ってもいない、ジョークも言わない。ただ疲れきって肩を落とし、のど仏をびくびく動かして、髪はくしゃくしゃで、肌は上気して。科学教師は目の前の情景を断ち切るため、完全に目を閉じなければならなかった。「準備はいいかい?」彼はかすれた声で、トロイとジョナサンがアメリカンアイドルについて楽しそうにくだらない口論をしているのが聞こえてくる別の部屋の方をボトルで指して、そう聞いた。

ジェイクはその機会をとらえ、自分の指を引き出しで勢いよく挟んでみることを真剣に検討した。そうすれば簡単に気を散らすことができる、そうだろ? そうとも。 「おう」と、彼は呟き、三本のマーカーと自分のビールをつかむと、別の部屋へと向かった。

ブランドンは彼について歩きつつ、白い野球ズボンに包まれたジェイクの尻を見つめないよう必死で努力した。とにかく必死で。なんだよ、もう! 考えるな。ジェイクがホワイトボードの前に立つと、彼は、トロイをドリトスから引き離す方向へと押しやって、ソファに腰を下ろした。

「頼むよ、バートレット、いじわるすんなって」トロイが哀れっぽい声を出し、チップスの袋に手を伸ばそうとして、実際にブランドンの上によじ登ると、ジョナサンは身もだえして大笑いし、ソファから床に転がり落ちた。

「トロイ!」ジェイクは怒鳴った。長い一日の後で、ただでさえうんざりして、疲れて、暑くて、薄汚れているってのに。 「落ち着きのない子供に飲ませるあのリタリンでもなんでも飲め!」彼はイライラと怒鳴り散らしながら、マーカーのキャップを外した。

トロイは彼に向かって中指を立てて見せたものの、ソファの自分の端へと戻った。ブランドンはチップスの袋をつかみ、トロイの胸元へと放った。 「ほら、いい子にしてなさい」彼が静かにそう言うと、トロイは笑いを噛み殺して、きちんと座りなおした。その顔には子供のような笑顔が浮かんでいる。

「ったく」ジェイクは呻き、マーカーの先をホワイトボードにつけたものの、その手を引っ込めた。「お前は、チーズを過剰摂取してハイになっとけ、俺は着替えてくる」彼は力なくそう呟いて、マーカーを置くと、階段を上りながらシャツを脱ぎ、それを使って胸元をぬぐった。

ジェイクの代わりにイライラを引き受け、ブランドンは手を伸ばして、トロイの後頭部を叩いた。 「君は彼の友達だろ? 彼がどんなに疲れてるかわからないのか? ちょっとは口を閉じたらどうだ、トロイ」

「なんだよ。もしあいつが疲れるたびに口を閉じてたら、俺は年がら年中黙りっぱなしでいなきゃならないぜ」と、トロイはぶつぶつ言って、生物の教師を睨みつけた。

「ま、ちょっと大目にみてやってよ」と、ジョナサンが床に落ちたままの場所から言った。「じゃなきゃ、トロイとジェイクなんていうガキどものことは放っておくかさ。僕らだって、ヘッドコーチから酷い目に遭わされてるんだから」

トロイとジョナサンは低い声で話し続けていたが、ブランドンはただじっと階段を見つめ、彼が目にした裸の胸と背中で、筋肉が動いていた様子を思い出していた。彼は唇を引き締め、今晩はこれを最後の一本にしておこうと決めていたにも関わらず、手にしたビールをごくごくと飲んだ。

ジェイクはシャワーを浴びなかったが、清潔な服に着替えただけでもだいぶ気分がよくなり、彼はそのまま階段をドスドスと下りた。彼はゆったりしたスウェットと、柔らかくて薄く、第二の皮膚のように体にフィットする大学の友愛会の名前の入ったTシャツを着ていた。くつろぎウェアってやつだ。彼は、他のメンバーにもそれぞれ一枚ずつTシャツを持ってきて、ソファの大体の見当に向かって投げ、再び自分のビールを取り上げた。

「よし」彼は短く息を吐き、マーカーを取り上げた。「みんな落ち着いたか?」彼は、トロイがアンダーアーマーを脱ぎ、居心地良くジェイクのTシャツを着込むと、疲れた声で尋ねた。ジョナサンはTシャツを受け取ったものの、たたみなおしてそのまま横に置いた。あきらかに、小柄な男はアンダーアーマーを着たままでも窮屈でないのか、もしジェイクのシャツを着たら、パパの服を着た五歳児のように見えることを知っているようだ。

ブランドンは、ジェイクが彼に向かって投げたシャツを持ち上げた。 『男女混合裸レスリング』 なかなか趣がある。彼は控えめの笑顔を浮かべ、トロイがジェイクに小声で謝っているのを聞きながら、ジャージを脱いだ。次にアンダーアーマーを脱ぎ、ブランドンは肌に触れた冷たい空気に驚いた。ユニフォームの中にこんなに熱が籠もっていたことに気づいていなかった。ただ熱を冷ますため、彼はTシャツを持ったままその場に座り、トロイがちゃんと座って、少なくとも自分の半分の年齢くらいの態度をとるようにする、と約束しているのを聞くともなく聞いていた。

ジェイクは振り返り、何かを言おうとして、突然言葉を止めた。彼の目はブランドンの裸の胸を捉えていた。彼は瞬きし、素早く視線を逸らすと、赤面しないように努めながら、しばらくの間ホワイトボードを凝視した。ったく、どんどん重症になっていく。無言で、彼は野球部のトライアウトに参加した少年たちの苗字を書き始めた。六十人全員分、記憶だけで。アルファベット順に。学年ごとに。

科学教師はあくびをし、ちょっと伸びをして背中のこりをほぐしてから、Tシャツを着て、それが実際彼の体によくフィットすることに驚いた。お気に入りで着古した感じがする。彼はショッキングな言葉を手でなぞり、笑いを抑えた。

「一年が二十二人いる」ジョナサンはジェイクにそう言って、ソファに背中を預ける形で床の上に落ち着いた。「少なくとも五人は残したい」

「四年が十五人」ジェイクは一つうなずいて応えた。「なんてこった、三年は全滅しちまうぞ」彼はぞっとしたように呟いて、また一連の名前を書き始めた。彼はしばしその場に立ち尽くして、計算した。選抜チームに入れられるのは二十人きっかりだ。そしてそれでも目一杯なのだ。「誰か名簿を取ってくれ、やつらの学年じゃなく、生年月日で考える必要がある。それと、去年の統計からな。ったくなー」彼は首を擦りながらひとりごちた。

「これって、俺のチームを皆殺しにすることになる。それはお前の来年のチームを皆殺しにするってことにもなるんだぜ」と、トロイは、ついに素面に戻った声で言った。 「三年たちに残された時間はわずかだし、もし今年外されたら、辞めるやつが出てくるかもしれない。大学に向けて、試合に出るチャンスをつかむためにバークマー高へ転校するやつさえ出てくるかも」

ブランドンは移動してジェイクのバッグをつかむと、自分の足元へと引きずってきて、コーチが要求する名簿を引っ張り出した。彼は生徒たちの略歴のページを開き、ヘッドコーチを見上げた。「読み上げようか?」

「待て待て」ジェイクは首を振りながらつぶやいた。彼は首の後ろを擦り、ボードの名前をしかめっ面で眺める。 「いいさ、なんとかなるだろう。最初は、完全に野球の技能だけでやってみる。それぞれ二十人に絞るんだ。それからってことにしよう、いいよな? 成績がどうかなんてことはとりあえずどうでもいい。第一選考に残るほどの技能があるなら、代表チームに入るに値する。それからあれこれいじくり回してみることにすればいい」と、彼は言い、確認のため他の三人を振り返った。

科学教師は肩をすくめ、トロイとジョナサンを眺め、二人が揃ってうなずくのを目にした。ブランドンはソファに深く座り、両足をコーヒーテーブルに乗せ、足首を交差させた。長い夜になりそうだ。

ジェイクはうなずき、ホワイトボードに向き直るとリストの名前を読み下して、確実に代表チームクラスである生徒たちの名前をチェックした。彼は明らかな初心者、そして何らかの理由で、実戦に向かない数人の生徒の名前を線で消し、一歩後ろに下がった。

十四人の代表候補が残った。その内五人は三年だ。彼はため息をつき、助言を求めて振り返った。トロイは肩をすくめてうなずいた。 「四年を削るのか?」彼は疑わしげにそう尋ねた。

「やつらの何人かは三年に負けてるからな」ジェイクはわずかに眉をしかめて呟く。「それにあのチビのガーナーは、もうちっと成長するまで、木に付けといた方がいいだろう」彼はそう付け加えて、その子の名前に思いっきり線を引いた。

「ガレットを削った方がいいかもしれないよ」と、ブランドンは、昨年の代表チームにいた四年生の名前を挙げ、静かに提案した。非常に優れた選手でもなければ、スターというわけでもないが、常に信頼の置ける選手だ。

「削るって?」ジェイクは真面目な顔で聞いた。科学教師からアドバイスを受けたという事実に瞬きすらしない。

「ああ。彼は毎日練習に来てるし、試合でもきちんとプレイする、だけど心ここにあらずだ。彼は、君が見てない時には、ほかの考え事に気をとられている。それに、ある噂を聞いたんだ…」ブランドンはそこで話を切った。野球に関係ない話なんかを皆聞く気があるのか確信が持てなかった。

「続けろ」ジェイクは一つうなずいて促した。

「クリスマス休暇の間に、彼がレイチェル・リチャーズに結婚を申し込んだって聞いた。噂では、彼女は妊娠してて、彼は天にも昇りそうに大喜びしてるって」

ジェイクは目の前の男をしばらくじっと見つめ、それから喉の奥で唸って、目をくるっと回し、首をコキッと鳴らすと、ホワイトボードに向き直った。 「坊主、頑張れよ」彼は低くつぶやき、その名前を消した。

ブランドンは肩をすくめた。 「クラークも問題ありかもしれない。女の子じゃなくて。成績の方で。マーティからは、今日ラウンジで、中退して、軍に入ろうかと思うなんていう話を聞かされた」

「ヤツは確かに殺しが好きだよな」トロイは、冷笑を浮かべ小さくコメントする。

「ああ。去年は、バッティング練習中、バッドを銃みたいに構えるなって、警告したくらいだったからな」ジェイクは低く呟いてリストから名前を消した。

ジョナサンはそれまで大人しくしていたが、突然、甲高い声で、完全にテーマからはずれた質問をした。「今年のロッカールーム係って誰が担当するの? 皆で分担?」

「去年と同じようにな」ジェイクはうなずいてそう答えた。「トロイ、どいつを入れたい?」と、彼はリストをじっくりと検分しつつ、突然聞いた。トロイがボードへと小走りに近づくと、二人の男は気楽な様子で肩をくっつけて並んで立ち、五分ほどをかけて、リストの名前を使ってぞっとするような〇×ゲームを展開した。

ジョナサンはその様子を首を伸ばして眺め、ブランドンに笑顔を見せた。 「ビール、おかわりは?」彼は静かにそう申し出た。

ブランドンは首を振った。 「運転する時は、二本が限界なんだ。それに、夕飯を食べてないから、まじで何か食べた方がいいみたいだ」と、彼は付け加えた。 「トロイのドリトス以外に何か食べるものある?」

「ねえコーチ、ピザなんかどうですか?」ジョナサンはブランドンの膝をポンッと叩いてそう聞いた。

ジェイクは振り返ると、ぽけっと二人の姿を凝視し、瞬きした。彼は、実際にジョナサンに嫉妬したのだという事実を無理やりに脇へと追いやり、うなずいた。なんてこった! ジョナサンが全く男に興味がないってことは、百も承知だし、そして彼の知る限りではブランドンも同様だっていうのにだ。彼は全くどうかしてしまったのだろうか? 「金は引き出しに入ってる」彼は片手を振って、上の空で呟いた。

ジョナサンは立ち上がると、わざわざブランドンの上にかがみ込んで、こう囁く、「もし飲みすぎれば、コーチ、ここへ泊めてくれるかもしれないよ。今日は長引きそうだしさ」 彼は、相手の教師の耳へと囁き、体を起こして言葉を続けた。 「何かトッピングのリクエストはあるかな?」

「肉!」トロイはそう要望を出した後、直ちにホワイトボードのところへと戻った。ブランドンは首を振った。彼は何でも食べるし、食べたくないものは摘まんでよける。その時、ジョナサンがよろめいてバランスを崩しかけたので、ブランドンは手を伸ばして尻を押し上げてやった。 「モレリの店に電話するなら、パークビューが州大会にでるところを見たいなら、大急ぎで配達しろって言ってやれよ」と、彼は言う。 「あそこのオーナーは卒業生だから」

「はいはいはい」ジョナサンは片手を振って、ふんっと息を吐き、電話をかけにキッチンへと言った。 「タダで尻を掴まないでよね」彼は、にやにや笑いながら、そう付け加えた。ブランドンは呆れ顔で目をくるりと回し、手を振って彼を追い払った。

ジェイクは小さく唸り、背をそらせ、眉をしかめてジョナサンを眺めた。 「ピーマンを追加だ」彼は、ブランドンがジョナサンの尻を掴んだことは自分にはなんの関係もないことだと、自分自身に言い聞かせようとしつつ、そう付け加えた。 「それからマッシュルームも!」と、彼が追加する横で、トロイが笑いを噛み殺している。 「おう! それとタマネギ!」さらに彼が追加すると、トロイは抑えきれずに体を震わせ始めた。 「黙れ」

「その顔なんだよ?」トロイは馬鹿げた大笑いの合間にそう尋ね、その結果、ヘッドコーチから強烈な一撃を喰らうことになった。

「どんな顔だって?」ジェイクは身構えるように言った。

「その、誰かが僕の子犬をけっとばしちゃって僕はそのことにムカついてます、って顔」と、トロイは描写を試みる。 「ったく。俺、お前のそんな顔見るの、初めてな気がするぞ。どうしたんだよ、何が気に食わないんだ?」

ブランドンは二人の男を交互に眺めながら、ソファからその会話を聞いていたが、最終的にジェイクに視線を落ち着け、トロイが描写する表情というのを識別しようとした。彼の目には、ジェイクはなんともないように見える。

「黙れ」ジェイクはぶつぶつ言って、リストから別の名前を線で消した。トロイはそのままソファの上に倒れて大笑いしている。

「君、コロナを何本飲んだんだい?」ブランドンは、ほとんど期待すら込めて尋ねた。

「一本だけさ」トロイは、だがクスクス笑いをしてジェイクを指差す。 「でも、俺はその顔知ってる。今、その顔の意味を思い出したもんね」彼が歌うようにそう言うと、ジェイクは振り返って彼を睨みつけた。 「お前、気になる娘を見つけたな」トロイは、歌うような声のままそう追求する。 「あーあ! そのコに振られたのか? お前が一日中、マジギレしてたのって、そのせいか?」と、彼は大喜びで尋ねた。

ブランドンの両眉が飛び上がった。なんてこった。まるで高校時代に逆戻りしたみたいだ。ここで再び、彼は物言わぬ傍観人へと格下げになるわけだ。ジェイクの顔が雷雲のように暗くなり、ブランドンは、キッチンにいるジョナサンのところへ合流した方がいいのだろうかと思い巡らせた。そうすれば、事件の目撃者はいなくなる。

「お前の母ちゃんにはいつだって振られっぱなしだからな」ジェイクは最終的に、その目にからかいの気配を込めてそう答え、ホワイトボードに向き直った。彼は、自分に向けて投げつけられたビールの空瓶をひょいっと掴み、ジョナサンが両手を広げて、いったい何を見逃したんだ? と聞きながら部屋に戻ってくると、鼻で笑った。トロイは再びソファに倒れこみ、ブランドンは、ジェイクが口にしなかった言葉はなんだったのだろうと考えた。こ気味いいやり返しの言葉の前、ちょっと長すぎる間があった。トロイは気づいている風もないけれども。金髪の男が、数本のビールですっかり出来上がってしまうくらいに酒に弱いことは明らかなようだ。ブランドンは、ソファの自分とトロイの間にジョナサンが座れるよう横にずれたが、ソファとコーヒーテーブルの間に体をねじ込もうとするジョナサンがバランスを取るため、ブランドンの肩に手を乗せたことには気づきもしなかった。

ジョナサンが再びブランドンに触れるところを目にして、ジェイクはさらに両肩を緊張させつつ、これは全て自分が考えすぎているだけのことなのか、と不思議に思い始めた。 「よし」彼はほとんど唸るようにして言い、吐息をついて、緊張をほぐそうと首を回した。 「あと十三人切らなきゃならない」彼は数えながら、そう宣言した。 「名簿を持ってるのは誰だ?」と、彼は尋ね、コーヒーテーブルにどさっと腰をおろした。ブランドンはバインダーを持ち上げ、空中でそれを振ってみせた。 「それに目を通して、こいつらの中で、九月以降に生まれたやつがいるか見てくれ」ジェイクは、彼が丸をつけた複数の名前を指しつつ、そう注文を出した。

ブランドンはページを繰って確認し始めた。 「エリス。ウォーカー」数ページ進む。 「あのスティストンって子。それだけだ」

「三人とも二軍だ」ジェイクは直ちにそう言明し、自分のビールを取るため、後ろに体をそらした。 「残りは…、くそっ、ここからがとにかく最低なんだよな」彼は呻いて、座った姿勢に体を戻し、眉間を摘まんだ。

トロイはため息をつき、これから彼らが下さなければならない厳しい選択を前に再び大人しくなった。あと十人の子を切らなければならない。 「俺は、ミラーとロドリゲスを除名候補に挙げる」と、彼は静かに言った。

「理由は?」ジェイクは望みを込めて聞いた。理由があるなら、結論を出し易い。

「やつらは一つのポジションでしかプレイできない、強みが一つしかないってことだ。他は全員複数のスキルを持ってる」トロイはそう答えた。 「代表チームに融通性を持たせることができるだろ」

ジェイクはしばらくこの点について考えをめぐらし、残念そうにうなずいた。 「やつらには、来年またトライアウトに参加しろってきっちり伝えとかないとな」彼はそうコメントすると、ゆっくりと立ち上がってホワイトボードのところへと戻り、その子たちの名前を消した。 「この中で、成績に問題があるやつは?」と、彼は尋ねた。

ブランドンは、リストに残っている名前をチェックした。あと八人切らなければならない。 「グレゴリーは、補習を言い渡されたところだ。化学の平均点がC以下に落ちたもんだから」と、彼は名前を挙げた。

「実際問題さ、マネロとスロダメシュを切ってくれ。もし今度あの馬鹿野郎どもがトイレでタバコをふかしてるところを見つけたら、ムチで尻をひっぱたいてやる」と、トロイが言った。 「あいつらも、それがチームの規則に違反してるってことは承知の上だ」

「そうか」ジェイクは、興奮ぎみにそう応えた。 「フルクとギリアムは冬休み中、飲酒で補導されてる」彼は皆にそう伝えた。彼はその事実を名簿に書き込むつもりだった。彼は名前の挙がった五人の名前を消し、最後の二つの名前に向けて頭をかしげた。 「トロイ、どうだ、お前のチームに十九人抱えられるか?」と、彼は尋ねた。

「しょうがないな。やつらがベンチに座ってるのに飽きれば、二軍のチアリーダーでもやってればいい」ブロンド頭のコーチはそうのんびりと言って、周囲からうめき声のコーラスを集めた。

「なに言ってやがんだ」ジェイクはぶつぶつ言いながら、自分にはまた別に対処が必要なチアリーダーたちがいることを思い出した。時々彼は、単にあの時の女性と結婚して、彼女を惨めにしておけば、彼の人生は今よりずっとシンプルだったろうと考える。 「いいだろう」彼はしばらくリストを見つめた後、そう言った。 「俺たちのチームが決まったぞ」彼は、ちょっと驚いたような声でそう宣言した。なんだかあっという間に決まった。まるでそれを祝福するかのように、ドアベルが鳴った。

「おおう、僕が出る」ジョナサンは興奮して大声をあげ、ソファーから離れるため、実際にブランドンをよじ登った。

ブランドンはどう見ても膝蹴りを喰らったらしく、呻き、あえぎ声をあげた。 「くそっ、ジョナサン、気をつけろよ!」彼は、するどく息を吐いて、年下の男の太ももの後ろを叩いたが、ジョナサンはそのまま玄関へと続く廊下へと駆け出て行った。彼は目をくるっと回し、ちょっと体を動かして、ニヤニヤしているトロイを睨んだ。 「君も気をつけろよ、ライム坊や君」ブランドンは喉の奥で唸り声をあげた。

「なんだよ?」トロイは戸惑った様子で尋ねた。その顔に浮かんだ表情を見ただけでジェイクは思わず含み笑いをし、部屋を出て、皿を取りにキッチンへと向かった。

ため息をつき、ブランドンはソファの端に頭を乗せ、思いっきり体を伸ばして横たわった。彼は現在、もはや礼儀をわきまえてなどいられないくらいに疲れていた。それにトロイなんか、礼儀が近づいてきて尻を噛まれでもしなければ、礼儀なんてものを知らないってことは確かなのだ、なんでブランドンが気にする必要がある? ブランドンの無礼にジェイクがムカついたとしたら、彼は遠慮せずにそういうだろうし。 「やだやだ」彼は最終的にそう呟き、天井を見上げ、明日のことを考えた。

「チームのメンバーは掲示板に張り出す」ジェイクは、ブランドンの嫌悪の表情を、チームメンバー絞込みに対する考えの表明と受け取って、そう応えた。 「選手たちは、自分たちがメンバーに入ったかってことは朝の放送で知らされるんだ。俺たちは、ガキどもが打ちひしがれるところを見なくてすむ。臆病者の逃げ方ってやつだな」彼がそう認めた時、ジョナサンが二つの大きなピザを持って戻ってきた。ジェイクは皿を置き、全員に新しいビールを手渡した。

ブランドンはビールに目をやり、心から飲みたいと思った。でも、もし今晩ここに泊まることになったら―もうそれほど寝る時間もない、今や九時になろうとしているのだから―いつもよりもずっと早く起きて、家まで運転して帰り、着替えて、学校が始まる前の朝の補習のため、街へと車で戻って来なければならないってことになる。彼はため息をつき、ボトルをコーヒーテーブルに置いて、自分の皿に数切れのピザを取ると、再び座って、トロイとジョナサンのそれぞれのチームに対する計画についてのおしゃべりを聞きながら、食べ始めた。

ジェイクはコーヒーテーブルの前の床に腰を下ろし、箱からピザを一切れ掴んで、皿なんかには構わずに食べ始めた。 「もう飲まないのか?」彼は手付かずのビールをちらっと見て、ブランドンに聞いた。 「俺んちには寝室が4つと、ソファも腐るほどあるんだぞ」と、彼は半分本気で冗談を言った。トロイは時々、床を荒らしてやりたい気分になったらしい時には、床で寝ている。

「僕は、今晩どうしても運転して帰らなきゃならないんだ」ブランドンは口一杯にソーセージとペパローニを頬張りつつ、そう言った。 「もしここに泊まったら、とんでもなく早い時間に起きて、家に帰って、それからUターンしてまた街に戻ってこなきゃならない」

「お前な、俺にとっちゃ、家に帰らずここに泊まることをあきらめさせるほどの早起きなんて存在しないぜ」トロイはある種子供のような陽気さでそう表明する。 「お前んちまで車でどのくらいだ?」彼はしかめっ面で聞いた。

「マウンテンパークまでは、四十分弱だよ。暗くなってからだともっとかかる、鹿も沢山出るし」ブランドンはそう答えて、前に屈み、全部乗せピザを一切れ掴んで取った。 「もし泊まったとして、いつもどおりの時間に学校に間に合わせるためには、僕はここを午前三時に出発しなくちゃならない」

「なんだって?」ジョナサンは恐怖に慄いて聞いた。

「お前、毎朝何時に学校に着いてるんだ?」ジェイクは、自分で聞いておきながらその答えを知りたくもない、そんなことは彼の知ったことではないし、それに、ブランドンの喉を凝視するな! と自分に言い聞かせつつ尋ねた。

「六時ちょっと前」と、科学教師は低く呟いた。彼は視線を端から端へと動かし、三人の男たちが、様々な度合いの恐怖の表情を浮かべて彼を見つめているのを確認した。弁解なんかしないぞ、絶対…と思いつつ、「なんだよ?」と、彼はうっかり口を開いてしまった。

「なぜだ?」トロイは、いつもより少し甲高い声で断固として尋ねた。彼の口調は人類を代表して憤っているかのようだった。

ブランドンはピザを飲み込んだ。 「僕は、補習を受け持ってるから」彼は短くそう言って、体を少し動かし、片足を体の下に敷きこんだ。

「自分で進んでか?」トロイは同じ信じがたいという口調で尋ねた。

「うん、自分で進んでね」ブランドンは身構えるようにそう言い、攻撃に備えるかのように少し体をすくめた。

ジョナサンは眉をしかめた。 「そういうことをやらせるのに、フルタイムで人を雇ったっていうのを地区の回覧メモでよまなかったっけ?」ブランドンはきまり悪そうに肩をすくめた。皆にそれが無報酬の仕事だということを話すつもりはなかった。

ジェイクは目の前の男をじっと観察し、彼が少し自分の殻に引きこもり始めたのを見て取った。そんなことをする理由は全くないのにだ。そしてジェイクは、ブランドンが早朝に子供たちの勉強を手伝っているという事実について、皆で寄ってたかって彼に恥ずかしいことだと思わせるようなことをしている自分たちを彼はどう思っているのだろうと考えた。ある理由から、それは彼をちょっと苛立たせたが、それ以上に、居心地悪そうなブランドンのことが心配だった。 「去年の秋、俺たちが毎週末チームを引き連れて回ってたのと大した違いはないだろ」と、彼はトロイに静かに指摘した。

「まあ、そうだけど、でも早朝六時だぞ?」と、トロイは言った。 「それって拷問だぜ! 少なくとも俺たちが働いてたのは昼過ぎだ」

ジョナサンはブランドンとトロイを見て、そこに不穏な空気を見て取った。 「黙れ、トロイ。ブランドン、君、今はコーチの仕事を引き受けたわけだけど、これからも補習は続けるってことかい? それって、一日十二時間から十四時間も働くことになる、それも練習日の場合ってことだ。試合の時は―遠征だったら、まじで―時には午前一時まで帰れない時だってあるんだぜ」

ブランドンは再び顔を上げ、皆が彼の答えを待っているのに気づいた。 「子供たちは僕を必要としてる。それが補習だろうが、コーチの仕事だろうが関係ない。僕は子供たちのためにそこにいる」彼はそう静かに言った。しかし彼の声は断固としていた。

ジェイクは目の前の男をもうしばらく見つめた。彼はいまだにこの男のことを気に入っているのかどうか、決めかねていた。二人きりの時は気に入っている、しかし他人が周りにいる時に自分の殻に引きこもってしまうような不器用な様子を見ると―というか、ったく、ジェイクに対してすらそんな態度を取るやつだ―ジェイクはどう対処していいものかわからなくなる。彼の周りの人間は、常に、彼が気楽にしていて欲しいと思う時には気楽にしている人間ばかりだったから。 「お前がもしエネルギー切れになりそうだと思ったら、俺たちに知らせろ。遠征試合はサボってもいいから」ジェイクはそう静かに提案しながら、三本目のビールを開け、ごくごくと飲んだ。薬とビールがやっと効き始めたが、まだ足りない。

そんな風に仕事をサボったりするという考えは本当に嫌だったが、ブランドンはその事実については既にたっぷり心配していたことだったから、反論しなかった。少なくとも今のところは。 「覚えておくよ」と彼は言った。 「ありがとう」

トロイとジョナサンは意味ありげな様子でお互いを見やった。その後、一年生チームのコーチは甲高い声を出した。 「僕、テストの採点手伝えるよ」と、彼は申し出た。ブランドンは彼を眺め、片方の眉を上げた。トロイは低い声でぶつぶつ何事かを言った後、鼻の頭にしわを寄せた。 「俺だって手伝えるさ」と、彼は呟いた。それから彼は急に明るい顔になった。 「俺、スクールバスの座席で寝る最高の方法を実地で教えてやれるぜ」

ブランドンはあまりにびっくりして、言う言葉が見つからなかった。彼はこの男たちのことをほとんど知らないっていうのに、彼らときたら、こうして助けの手をさし伸ばしてくれている。自分をとんでもなく小さく感じる、まさにそんな感じだ。これがチームのメンバー同士の仲間意識っていうものなのだろうか? チーム仲間はいつだって協力し合うものだって言うのは、こういうことなのか? ブランドンが一度も経験したことのないことだった。

「それに坊主たちだって、お前がちょっとだけ信用してやれば、たぶん何かしらできると思うぞ」ジェイクは、完全なショック状態のブランドンには気づいた様子もなく、ピザに手を伸ばしながら追加した。

「あー」ブランドンは何と言っていいかわからないままだったが、「嬉しいよ」という言葉で落ち着いた。

ジョナサンは身を乗り出し、彼の肩を叩いた。 「ブランドン、君はもうチームの一員なんだ。俺たちはお互い面倒見合うもんなんだよ」

「それか、お前の下着を旗竿の天辺からぶらさげるか」と、トロイがにんまり笑って付け加えた。

ジェイクは呆れ顔で目をくるっと回し、何年も前、ライバルチームに勝利した祝いに、自分自身のボクサーショーツがぶら下げられたことを思い出した。 「俺たちはもうそういうことはしない」彼は目の前の男に保証した。 「この頃じゃ、どんな種類のいじめをやっても、チームから放り出されるからな」彼は殊の外、彼に向かって満面の笑みを見せているトロイに向かって言った。

「僕のライムたちに対して行われた、不快で自然に反する行為もいじめにカウントされる?」ブランドンは真面目を装ってそう尋ね、トロイを睨みつけた。ジョナサンが含み笑いをする。

「とにかく、そんなライムなんか捨てちまえ」ジェイクは素早くそう言って、イメージを払拭するかのように頭を振った。 「なあ、お前、そんなことばっかやってると、悪い評判が立つんだぞ」と、彼はトロイに向かって追加で言った。

「俺、自分の男らしさには自信あるもんね、巻き毛ちゃん」トロイはクスクス笑って言い返し、笑顔でコロナの残りを飲み干した。

ブランドンは思わず笑い出した。 「巻き毛ちゃん?」彼はジェイクの短く刈った髪を見た。

ジェイクは大っぴらに顔を赤くして、視線を下げたかと思うと、その場に座ったまま、なんと実際に言い訳をし始めた。 「俺の髪は、これ以上長くなると、カールし始めるんだ」と、彼は説明する。 「学生時代を覚えてるだろ。巻き毛ちゃんなんて、最高の悪口だぜ」彼が肩をすくめてブランドンを見上げると、トロイとジョナサンは大笑いした。

科学教師は頭を傾け、いたずらっぽい光をその目に浮かべ、軽く声を震わせて歌い始めた。 「サンダー、サンダー、サンダー、サンダーキャット!」

ジェイクがびくっと視線を上げ、完全に百八十度変わった彼の態度に驚き、信じれないという顔で目の前の男を見つめると、トロイは盛大に噴き出し、彼を指差して小さな少年のように全身で笑い続けた。ブランドンは大笑いしすぎて、ソファから落ちかけた。 「なんだい?」彼は笑いの合間に聞いた。 「あの歌、覚えてないのか?」

「俺、あれを覚えてるやつは全員脅して記憶喪失にさせたと思ってた」ジェイクがそんなことを口にすると、トロイはわき腹を押さえてソファの上で転げまわり、制御の効かない笑いの発作に襲われ始めた。

ブランドンは肩をすくめようとしたものの、単にもっとひどく笑い始めた。 「だったら、僕のことを見落としたんだね。まったく。あのフレーズは学校中を巡ってたんだ。トイレの壁にまで書かれていたんだから」ジョナサンとトロイは、そこでまた新たに一連の笑いの発作に取り込まれた。

ジェイクは居心地悪そうに体をもぞもぞさせた。 「なんでだよ?」彼は実際半泣き状態だった。フットボールの試合中の掛け声で、彼がどうしても理解できなかったのがまさにそれだった。なのにチアリーダーたちは、いくつかの試合でまで使っていたのだ。

ショックに目を見開き、ブランドンはただじっと彼を見つめた。 「君、理由がわからないっていうのかい? まったく、僕ですら理由はわかるよ。マンガがあっただろ? 『サンダーキャット』っていうさ? あのマンガのリーダーの若い男は、大きな声をとどろかせて、チームを戦いの勝利に導くんだ。あれって、賞賛の掛け声だったんだよ、フットボールコートにいる君へのね。今となっては、死ぬほどおかしいことだとしてもさ」

「マンガ?」ジェイクは疑わしそうにオウム返しで聞いた。彼は不満そうに息を吐き、より一層顔を赤くして、ビールを飲み干した。

「知らないの。今度、君のためにレンタルで借りてきてあげるよ」ブランドンはそう言って、頭を振った。 「とにかく、僕を信じてくれ。あれは賞賛の掛け声だった」彼は再び含み笑いをし、片足でジェイクの膝を軽く突いて、聞こえよがしの囁き声で言った。 「スピードボール君」

「わかった、もう思い出話は沢山だ!」ジェイクは大声を張り上げ、空中で両手を振って目を閉じた。 「なんてこった」と、彼は呻く。 「あの当時ですらこっぱずかしかったってのに、何年経っても余計にひどくなるだけだな」

ジョナサンとトロイは、笑いすぎでほとんど泣きそうになっていて、ブランドンはなんとか真面目な顔を保とうと唇を固く引き締めたものの、惨めにも敗北した。 「どれも、僕が昔呼ばれてたあだ名に比べたら比較にならないくらいマシだよ」科学教師は当然だという顔でそう指摘した。

「お前な、観覧席に満杯の人間からそれを叫ばれて初めて、本当の比較ってことになるんだからな」ジェイクはそう反論したものの、昔のいくつかの試合のことを思い出してさらに赤くなった。相手のチームが大笑いし始めるまでは、それほど悪くなかったのだ。もちろん、やつらが笑っていられたのも、試合でコテンパンに打ちのめされる前までだったが。 「ったく。しまいには対戦してる選手まで、俺をそう呼び始めやがったんだ」

トロイは鼻を鳴らして笑った。 「それでお前が余計に怒ったおかげで、俺たちはやつらをメッタメタにしてやったんだよな」ブランドンは、トロイがジェイクのワイドレシーバーだったことを覚えていた。このやりとりの間ずっと笑い続けていたジョナサンは立ち上がり、再びブランドンをよじ登ると、『サンダーキャット』のフレーズを口ずさみつつ、もっとビールを取りにキッチンへと向かった。

ジェイクは物騒に唸り、依然として盛大に赤面したまま体を丸め、その場の全員を睨みつけた。ブランドンは我慢できずに忍び笑いをもらしたものの、ジェイクに同情を表明した。 「ごめんよ」彼はそう呟いたものの、その顔は思いっきり笑顔だ。

「ろくでなしどもが」ジェイクはふてくされた様子で応答した。ったく、こういう思い出を掘り返されるのはこんなに恥ずかしいものか。なぜここまで恥ずかしいのか、彼にも判然としなかった。ひょっとしてそれは、この午後一杯ブランドンに劣情を抱き続けていたっていうのに、当のブランドンが昔の彼について覚えていたのは、馬鹿げたニックネームだけで、しかもそれを彼が大声で口にしたってことに、何かしらの関係があるのかもしれなかった。

ジョナサンは三本のボトルと、ブランドンのためにコーラを一本持って戻ってきて、皆にそれを手渡して回った。 「さあ」と、一年生のコーチが口を開く。 「他にも僕らが知っておくべき、美味しいゴシップ話が何かあるかな?」と、彼は尋ねた。

「ゴシップ? パークビュー高校のならいくつかあるけどな、でもお前、パークビューの職員知ってるのか?」トロイは中学校の教師に聞いた。ジョナサンはただニッと笑顔を見せた。 「よし」と、トロイは言った。彼は他の男たちを見回した。 「俺、ジェイソン・ビールズとタミー・パーカーが美術室の用具入れの中にいるところをレナータが見つけたって話を聞いたぜ」

「なんだ、俺は前にそいつらをロッカールームから追い出したことがあるぞ」ジェイクは頭をふりつつ笑い声をあげた。 「うっ」そこで彼は自分が今何を口にしたかに気づいて、声を上げた。 「そろそろ俺の口にガムテープを貼った方がよさそうだな」彼は呻いて、立ち上がると自分が飲んだ三本のビールの空き瓶をつかんだ。 「薬が効いてきた、じゃあな、お前ら」

「僕はもう行かないと」ブランドンは残念そうにそう言った。 「君たちここへ泊まるのかい?」彼はトロイとジョナサンに尋ねた。

「お前が乗っけてくれるなら、学校まで乗っけてもらう」トロイはうなずいて立ち上がると、柄にもない心配げな表情を浮かべて、キッチンへ入っていくジェイクを見つめた。

「僕も」ジョナサンはそう答え、ピザをまとめ始めた。

ブランドンはトロイの視線の先を追った。この二人は本当にいい友達なのだろうと彼は思った。金髪の男が常にふざけまわっているにも関わらず。そしてそんな彼が心配な顔をしているということは…、ブランドンは頭を振り、名簿をジェイクのダッフルに押し込むと、空き瓶を集めてキッチンへと運んだ。トロイとジョナサンも、それぞれピサの箱と瓶を数本手に彼の後に続く。ジェイクはビールを片手にキッチンカウンターに座り、両足をぶらぶらさせていて、トロイはピザをカウンターに置きながらクスクス笑った。

「なあ、俺たち試合の後、こんなことやってた夜が何回あったかな?」ブロンドの男は、突然神妙な顔に戻って、考えにふけった。彼はジョナサンとブランドンを笑顔で振り返った。 「毎週金曜の夜の試合の後、俺たちはここに溜まってたんだ。チームのほとんど半分くらいが来てた。学校のやつらは俺たちが外に繰り出して飲んだり、パーティーをやったりしてたと思っていたけど。でも俺たちはキャンベル家に来てたんだ。こいつの母さんが皆にフライドチキンを作ってくれてさ、俺たちは焚き火を囲んで一晩中裏庭にいたんだ。そん、時ビールなんてあったかな、俺、思い出せないや」彼は懐かしそうにジェイクにそう語った。

「あるもんか」ジェイクは「そんなもんがみつかったら、親父に俺たち全員尻の皮が剥けるほどひっぱたかれてた」彼は頭を振りながら笑った。 「ドリトスとゲータレードだ。神々から授かった食い物だ」

トロイは鼻を鳴らして笑い、ジェイクを指差して満面の笑みを浮かべた。 「アトランタのトーナメントから運転して帰った夜のこと覚えてるか?」彼は大笑いしながらそう尋ねた。ジェイクは笑顔になり、その夜のことを思い出して頭を振ったが、昔話に没頭してブランドンとジョナサンを置いてきぼりにしてしまったことを詫びるように視線を向けた。 「俺たちは土曜のトーナメントのために車でそこへ行ってたんだ」と、トロイが続けて二人に語り始める、 「で、そっからの帰り、ジェイクの車には俺たちと、あと二人のやつらが乗ってた。俺らはどっかのガソリンスタンドで停まって、腹をもたせるためスナックを買ったんだよな、それから皆で車に戻って、ジェイクは運転しながら自分の飲み物を袋に入れたまま飲み始めたんだ」

「ちなみに俺たちが買ったのは、ドリトスとドクターペッパーだ」と、ジェイクが口を挿む。

「するとあるおまわりが、こいつが運転しながら茶色の紙袋に入れたものを飲んでるのを目撃したわけだ、な? その警官は俺たちの車を停めさせた」トロイは笑いながら話を続けた。 「で、その警官、スポーツやってる人間になんらかの反感を持ってたんだろうな、なにしろすげえ勢いでキレ始めたんだ。俺たち全員まだユニフォームのままってのもあったし、警官はジェイクを車から降ろして線の上を歩かせた、だよな? こいつが酔っ払ってるとでもいうみたいにさ! それから警官は顔をくっつける勢いでジェイクのまん前に立つと、『坊主、俺に息を嗅がせてみろ』って言ったんだ。この時点で、残りの俺たちは車の中で死にそうだった、だってジェイクはその警官より余裕で一フィートはでかいっていうのに、そいつはやけにいきがってて、しかもジェイクはほとんど一日中ってくらいずーっとドリトスを食ってたんだ。ジェイクはこう言った、『俺の息なんかまじで嗅ぎたくないはずですよ』」トロイは、楽しそうな笑顔を浮かべているジェイクのことを指差しながら笑いすぎて話を続けられないくらいになった。 「それで、警官は余計いきり立った」トロイはほくそ笑みながら続けた。 「だからジェイクはただ肩をすくめて、皆さんご存知のドリトス臭い息をやつに思いっきりかけてやったんだ」トロイは甲高い笑い声をあげた。 「ったく、あれは笑えた」そう言って、彼は懐かしそうにくすくす笑う。

ブランドンは驚きに目を見張った。 「じゃ、君が逮捕されたっていう噂はその件が発端なんだね?」と、彼はジェイクに聞いた。

「たぶんな」ジェイクはちょっと笑顔を浮かべてのんびりと言った。 「俺がどんなに言っても、誰もそんなことはなかったって信じてくれなかったけどな」

ブランドンはただ頭を振り、時計を見て、身をすくめた。九時十五分だ。 「行かなきゃ。さ、みんな。バスが出発するぞ」彼はバックパックをとるためリビングに向かった。

ジェイクは黙り込んで、胸の奥の落ち込む感覚に浸った。これはやばい。この男におかしな気持ちを抱くなんてことはやっちゃいけない、ブランドン・バートレットは駄目だ、とにかく今は駄目だ、この先だって駄目だ。今の彼は、あの男を目にするたび見惚れてしまい、それからブランドンが誰かを自分自身に思い出させ、そんなことをする自分を責めるか、もしくはそもそもブランドンに見惚れたりした自分を責めることになるのだ。この状況にはイライラする、控えめにいっても。

ジョナサンがトイレに行ってくる、と声を上げると、トロイはブランドンの後に続いて歩き出しつつ、ジェイクの肩を叩いた。ブランドンは体をかがめてバックパックから鍵を探し、ジャージを肩にかけた。 「ねえ、ジェイク、このTシャツ洗って返したほうがいい?」彼はアンダーアーマーをバックパックに詰め込みながらそう声を上げた。

「いや、どうだっていいさ」ジェイクは微かに震えながらぶつぶつ言った。

ブランドンはゆっくりうなずき、ドア口に立っている男を見やった。 「また明日」と、彼は言った。

「おやすみ」と、ジェイクは言い、奇妙な顔つきでブランドンを見つめた。彼は、トロイが咳払いするとひどく驚いて、頭を下げ、少し顔を赤くした。 「俺、寝るわ」彼は、きまり悪そうな口調でそう付け加えた。

トロイは横目で彼を見て、うなずいた。 「おやすみ」と、彼は言い、ドア口に佇んで皆を見送っているヘッドコーチを一人残して、他の二人に続いて車に向かった。

「コーチって今、何錠くらいあの薬飲んでるの?」と、ジョナサンがトロイと一緒に歩きながら低い声で尋ねた。

「あの薬は単なる関節炎用タイレノールだ」と、トロイは肩をすくめて答えた。 「ヤツがおかしな態度をとってたのは、薬品のせいじゃない」

「処方薬の瓶に入った関節炎用タイレノール?」車に乗り込みつつ、ブランドンは静かにそう質問した。

トロイは一瞬口をつぐんで考え込んだ。「あの瓶のことは聞いたことないな」と、その後彼は答えた。

彼らは赤信号で停まるまで黙り込んでいたが、ブランドンはふと、ジョナサンが変わった質問をしていたことを思い出した。 「ジョナサン、ロッカールーム係がどうとかって、あれ、なんだい?」

「あー」話題が変わったことに明らかにほっとした様子で、ジョナサンがそう返事の声を出した。 「えーっと、僕ら試合の前はいつも見回りをやってるんだよ。興奮状態の選手たちが行き過ぎたことをしないようにさ」

「って、つまり?」ブランドンはさらに追及した、どういうことが起こるのか、心の準備をしておきたかった。

「つまり、試合の前も勝った後も、あいつら少し気持ちが高ぶってるってことさ。だから、あいつらの冗談とか、いたずらとか、ふざけてひっぱたき合ったり、くすぐり合ったり、なんていうのが手に負えなくなったりしないようにするってことさ」と、トロイは言った。

「ふざけてひっぱたき合ったり、くすぐり合ったり?」ブランドンは驚きあきれてそう聞いた。高校のロッカールームで?

トロイは単に肩をすくめただけで、彼もジョナサンもそれを特別奇妙だとは感じていないようだった。 「大抵の場合、僕らがロッカールームにいるだけで効果があるんだ」ジョナサンはそう付け加えた。 「僕らの存在があの子らを落ち着かせるんだよね」

ブランドンは頭にぽんっと浮かんできた様々な質問を飲み込み、ジェッタを駐車場に乗り入れ、ジョナサンの車のところで停まった。 「皆、また明日」と彼は呟いた。

「乗せてもらってありがとう」ジョナサンはそう応えて、後部座席からすべり出た。

トロイはドアハンドルに手をかけ、ジョナサンが自分の車へとのんびり歩いていくのを眺めながら、ちょっとの間、助手席に座ったままでいた。 「あの処方薬だけどな」と、彼はついにゆっくりと話し始めた。 「あれのおかげで、やつはあれ以上の馬鹿なことをせずにもってるんだ」

彼はブランドンがこれまで見たことのない真面目な顔をしていた。 「君って、彼のことをとてもよく知ってるんだ。そうだよな?」と、科学教師は尋ねた。

「ああ」トロイは頭をひょいっと動かし、顎を引き締めてそう答えた。

ブランドンはゆっくりとうなずいた。 「わかった」と、彼は静かに言った。それ以上追求するつもりはなかった。ちゃんと事情をトロイが把握しているというのなら。

トロイは、もっと何か言いたい様子でもう少しそのままでいたが、しまいに彼はドアのハンドルを引き、ドアをゆっくりと押し開けた。 「乗せてもらってありがとな」彼はそう静かに言って、車を降り、芝の中に停めてあるゴルフカートに向かって歩き出した。

ブランドンは家への帰り道の間中、トロイの顔に浮かんだ表情のことを考え続けた。






***






ひょっとしたら、もう少し続きを投稿するかもしれません。



だってこの後が…!もごもごもご…。